研究課題/領域番号 |
17H06975
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
林 勇貴 大分大学, 経済学部, 講師 (00806614)
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研究期間 (年度) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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キーワード | 最適配置 / 公共施設 / 立地-配分モデル / p-メディアン |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、公共施設の立地と規模(配分)のあり方を理論分析および実証分析によって提示することである。そのためには、公共施設の立地と規模に関する現状や課題を明らかにすることが前提となる。平成29年度に行った自治体関係者、博物館関係者へのヒアリングや国内外の事例研究などの現状分析から、公共施設整備の意思決定には政治的構造要因や公共活動の持つ半独占的構造が影響しており、その背景には立地・規模(配分)を決定するための科学的な判断基準についての研究・開発の蓄積の少なさがあることが明らかになった。また、博物館を対象に各施設の効率性を評価し、効率性格差の決定要因を検証した結果、不便な場所の立地は効率性を低下させることが明らかになったことからも、公共施設の最適配置への取り組みが不可欠であるといえる。なお、博物館の効率性に関する研究成果は大分大学『経済論集』第69巻第5・6合併号に掲載した。 次に現状分析を踏まえて、立地と配分の両面を考慮した公共施設整備の最適化問題を検証するために、理論分析の足がかりとなる文献研究を行った。公共施設の空間的効率性や平等性の分析に有効である立地-配分モデルには目的関数として総移動コストを最小化するp-メディアン問題の他、需要の被覆を目標とした集合被覆問題などが挙げられる。立地-配分モデルを扱った地理学の分野である多くの研究は、地域住民が施設からの便益を得るために要する私的費用を最小化することを目的としており、p-メディアン問題を扱っている。しかし、本研究では、公共施設から生じる社会的厚生の最大化を目的とすることから、これまでの文献研究をもとに、公共経済学の分野である「資源配分問題」を組み合わせた理論モデルの構築を行う。 なお、以上の研究成果の一部は分担執筆である『地域政策の経済学』(日本評論社、5月刊行予定)において掲載する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度である平成29年度は、1.事例研究やヒアリング調査などの現状分析、2.理論分析に関する文献研究を行い、おおむね進展したといえる。しかし、交付決定が平成29年9月だったこともあり、初年度の研究計画であった立地と配分を内生化した理論モデルの構築が少々遅れているため、平成30年度に精力的に進める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は主に1.現状分析、2.理論分析、3.実証分析に分類できる。平成29年度は、1.現状分析、2.理論分析を対象として研究を行ったため、平成30年度は引き続き、2.理論分析、3.実証分析を行う。 2.理論分析では、輸送コスト最小化を最適立地とする「立地・配分問題」と社会厚生最大化を目的とした「資源配分問題」の文献研究を踏まえ、理論モデルの構築を行い、最適化の条件を明らかにする。なお適宜、学会やセミナー等で研究報告を行い、地理学や経済学の専門家からアドバイスを踏まえてモデルの修正を行う。 3.実証分析では、理論モデルの最適化の条件をもとに実証モデルを構築し、施設の立地と規模に関する最適化問題の解を導出することで、公共施設整備のあり方を明らかにする。そのためには、公共施設から発生する便益の計測が必要である。したがって、二段階ヘドニック・アプローチなどを用いて対象博物館の便益を計測する。 なお、適宜、自治体関係者や博物館関係者、専門的知識を有する研究者に経過を提示し意見交換を行った後、修正点や成果を報告する。
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