研究課題
網膜には循環血液からの物質輸送を制限する血液網膜関門と呼ばれるバリア機能が存在しているため経口・静脈内投与による眼疾患の薬物治療は困難である。血液網膜関門には多数の薬物輸送トランスポーターが発現しており、これらが循環血液から網膜への薬物輸送を制御する要因の一つだと考えられている。近年、薬物輸送に関与するトランスポーターの多くが、時計遺伝子の制御下にあり、その発現や機能に概日リズムが認められることが明らかになってきている。これらの点から、血液網膜関門のバリア機能には概日リズムが認められ、薬物が循環血液から網膜へ移行しやすい時間帯、移行しにくい時間帯が認められると仮説を立てた。本研究では血液網膜関門を構成する網膜色素上皮細胞を用いて検討を行った。デキサメタゾン刺激により概日リズムを同調させたヒト網膜色素上皮細胞においてMDR1やBCRPなど代表的なトランスポーターのmRNA発現量を測定したところ、複数のトランスポーターに概日リズムの傾向が認められた。一方、腹腔内投与したバルプロ酸がマウス網膜で神経保護作用を示すことが知られているため、本研究ではバルプロ酸を用いて細胞内取り込み量の検討を行った。その結果、概日リズムを同調させたヒト網膜色素上皮細胞へのバルプロ酸取り込み量がバルプロ酸を暴露するタイミングにより異なることが明らかとなった。本研究結果から、薬物が循環血液から網膜へ移行しやすい時間帯、移行しにくい時間帯が認められることが示唆された。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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