研究課題
近年、育児放棄や虐待が精神疾患や発達性障害、筋異常疼痛などの発症に関与することが報告されている。しかし、その詳細なメカニズムや原因は不明である。我々は新生児期に正常な神経回路を形成するためにγ-アミノ酪酸(GABA)が興奮性に作用すること、また、ある一定のタイミングで抑制性に機能変化することが必要であることに着目した。そこで、育児放棄モデルで幼少期ストレスの1つである母子分離をマウスに対して行い、母子分離により、GABA が興奮性から抑制性へ機能変化する GABA スイッチのタイミングが変化するのか、GABA の抑制性に関与し、細胞外にクロライドをくみ出すトランスポーターである KCC2 や、GABA の興奮性に関与し、細胞内にクロライドを組み入れるトランスポーターである NKCC1 の発現が変化するのか、抑制系の成熟に関与することが示唆されているシナプスの刈り込みは影響を受けるのかを検証することとした。その結果、母子分離により GABA スイッチが遅延すること、KCC2 の細胞体周囲の発現は減少するが、NKCC1 の細胞体周囲の発現は母子分離により影響を受けないことを示した。また、抑制系の成熟が正常に行われないことで、シナプスの刈り込みが正常に行われないこともわかった。さらに、思春期相当の時期に行動解析を行い、母子分離により、多動性の増加、認知能力の低下、注意力の低下、攻撃性の増加を認めた。これらの結果により、精神疾患や発達性障害、筋異常疼痛などの発症の予防、改善に、KCC2 や GABA スイッチを介した、抑制系の成熟を標的とした新たな治療法の確立が期待される。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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東北医科薬科大学雑誌
巻: 65 ページ: 印刷中
Atlas of science.
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