2014年に「地域における医療の総合的な確保の推進に関する法律」の改正とともに地域医療構想が打ち出され,特に医療機能の見直しにせまられている中小病院にとっては,参画の方向性が見えにくい。2014年に独立行政法人地域医療機能推進機構(以下,JCHO)が設立され,所属する57病院がそれぞれの地域において地域包括ケアの先駆的取組を開始した。JCHOの取組から地域包括ケアシステムの構築の主体である市町村等の自治体が,地域における看護専門人材をどのように活用できるのかを明らかにし,自治体と病院看護部門の連携に関し先駆事例を分析考察。病棟を転換や増床により地域包括ケア病棟を創設。多職種による地域包括プロジェクトチームを立ち上げマニュアル作成や他医療機関と連携。地域包括支援センター及び介護事業所との連携の強化。地域ニーズに合わせ専門分野のエキスパートの育成。訪問看護ステーションの創設。病院内外における多職種交流会の開催と講師派遣。地域密着型介護施設と業務連携し,24時間対応している訪問看護ステーション,入院から在宅まで継続し栄養状態の管理,摂取嚥下ケア,口腔ケア,ロコモ・フレイル予防に取り組んでいる。自治体からの委託を受け産後ケアセンターや病児保育事業の受託,認知症の人やその家族支援のために物忘れ外来の設置や認知症初期集中支援チームの活動の実施。また自治体の取組として,路線バスの廃止に伴い巡回バスの運行を行っているところもあった。 医療と介護をつなぐ地域包括ケアの要として、病院の看護部門の役割は大きい。本研究では、地域包括ケアシステムの構築の主体である自治体が地域の看護専門人材活用の必要性を明らかにした。限られた専門職人材で,住民の力を最大限に引き出し,自治体と各機関が協力し構築する多職種連携においても,看護の全人的なアセスメントやマルチ性は地域包括ケアの時代に再評価すべきである。
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