2年目(最終年度)である本年度の研究は、以下のように行った。まず、2018年4月から7月にかけては、イギリス領西インド諸島の政治史・社会史に関する二次文献および一次史料の収集と分析に当てた。二次文献については、イギリス帝国における人道主義および法に関する文献に加えて、19世紀前半のイギリス植民地において顕著であったリベラル・インターナショナルに関する文献、そして、事例となるジャマイカについての地域史研究を幅広く収集し、分析した。一次史料については、British Parliamentary Papers(PP)を中心として、関連する事例についての詳細な情報を集めて分析した。これらの作業によって、本研究の研究枠組みを精緻化するとともに、取り扱うべき具体的な事例を特定することができた。これを踏まえて、2018年8月13日から26日までの14日間、英国ロンドンの国立公文書館(The National Archives: TNA)において史料調査を実施した。調査においては、植民地省文書(Colonial Office Records: CO)のうち、1820~30年代にかけてのジャマイカにおける奴隷制廃止と法の問題に関連する史料を網羅的に参照することができた。また、刊行一次史料からはわからなかった新規の事例を複数発見し、その内容を精査することができた。これらの作業を踏まえて、2018年9月から2019年3月までは、史料の分析と論文の執筆を行った。その過程で、具体的な論文の構成を決定し、議論の骨子についてイギリス史家から専門的なコメントを得るため、近世イギリス史研究会において研究報告を行った(2018年10月7日)。これら一連の作業を踏まえて執筆した論文は、2019年3月に国内査読誌に投稿した。
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