本研究は、大気圧放電プラズマの相界面反応がプラズマ中の気相化学反応に及ぼす影響の解明を目的とし、電極表面近傍におけるラジカルの挙動をレーザー分光法により測定するものである。特に、純酸素中の放電においてオゾン発生効率が漸減する「オゾンゼロ現象」に関し、電極表面反応が現象発現に大きな影響を及ぼすことを鑑み、酸素プラズマにおける酸化系ラジカルの挙動解析を主たる対象とする。 平成30年度は29年度に引き続き、プラズマで生成された酸素原子の挙動を二光子励起レーザー誘起蛍光法(TALIF)によって計測した。一方、年度途中でレーザー装置が故障し、3か月使用不能となった。このことから、当初予定していた振動励起酸素分子の測定の優先度を下げ、電極近傍における酸素原子密度とオゾン密度の同時計測に注力することとした。 高純度酸素下の放電プラズマでは、プラズマで生成されたオゾンがレーザー光により解離してTALIF計測を乱す「オゾン干渉」が発生し、酸素原子密度の正確な測定が困難であった。平成29年度はオゾン干渉の度合いを数値計算で推定して補正していたが、本年度はオゾン干渉を実験的に補正する新たな手法を考案し実施した。これにより、従来困難であった高純度酸素プラズマにおける酸素原子密度の精密測定を実現した。更に、本手法によりプラズマ中の局所オゾン密度を計測できるため、酸素原子密度とオゾン密度の時間変化の同時計測が可能となった。その結果、純酸素プラズマで生成された酸素原子の減衰速度と、オゾンの生成速度がほぼ一致していることが判明した。よって酸素原子の再結合反応による無効消費はほとんどないと言える。 上記のように、酸素原子密度及びオゾン密度の同時計測実現は、オゾンゼロ現象の解明に大きく寄与すると考えられる。本研究の成果を国際学術論文に投稿する予定。
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