研究実績の概要 |
本研究はアラビドプシス属(Arabidopsis thaliana, Arabidopsis kamchatica, Arabidopsis lyrata, Arabidopsis halleri)とコムギ(Triticum aestivum)を複数の温度で栽培し、温度変化に伴う葉の形態可塑性を評価し、その遺伝子基盤に迫ることを目標としている。平成29年度実績としては、対象植物の栽培方法の検討、栽培設備の整備を進めた。 栽培方法の検討のため、一般的な人口気象器での、21℃での栽培に加えて、低温での比較可能な栽培条件を検討した。一般的な人工気象器では、13℃程度までの温度を下げて栽培できることを確認したが、それ以下には下げられなかったことから、4℃の低温室内に植物栽培棚を設置して栽培設備を整え、Arabidopsis thalianaが開花・結実する程度に育てられることを確認した。 また、Arabidopsis kamchatica の発芽率が低く十分量の栽培個体数が得られないという問題が生じた。その改善のため発芽条件の検討を行った。Arabidopsis thalianaおよびlyrataでは、一般的に実験用の栽培に使用されるMS栄養塩を含む寒天培地よりも、純水と寒天で作製した培地上の方が発芽率がやや高いことを確認したが、Arabidopsis kamchatica の発芽率は以前低いものであった。次にArabidopsis thalianaで発芽促進活性が知られるストリゴラクトンを投与したが、明確な発芽促進活性は見られなかった。 また、形態の比較に適した葉の発生段階を調べたところ、成熟しきっていない比較的小さい時期の葉が、同系統内でのバラツキが少なく形態の比較に適していることを確認した。
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