研究課題/領域番号 |
17H07002
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
佐藤 道大 静岡県立大学, 薬学部, 講師 (10629695)
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研究期間 (年度) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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キーワード | シトクロームP450 / 二次代謝産物 / 生合成 / X線結晶構造解析 |
研究実績の概要 |
本研究課題の目的は、細胞毒性活性を有するoxaleimide類の生合成における、ユニークな反応を触媒する酵素の機能解析である。特に末端二重結合およびイミド環の連続構築や、デカリン環の環縮小反応に注目し、これらの反応機構を明らかにすべく研究を行っている。本年度においてはまず研究実施計画に沿って、デカリン環からのインデン環への環縮小反応について解析を行った。 Oxaleimide類生合成における環縮小反応に関しては、デカリン環の二重結合の酸化、および2位の3級炭素への水酸基の導入が必要であると考えられている。この反応は、導入された水酸基の酸素原子における非共有電子対からの電子の押し込みを起点としたセミピナコール型の転位反応によって進行すると考えられる。これまでの研究から、デカリン環における二重結合の酸化には、PoxD(P450)の関与が示唆されている。またalpha-ケトグルタル酸依存性酸化酵素であるPoxKは、3級炭素に水酸基を導入する酵素CmcJと相同性があることから、デカリン環の2位に水酸基を導入すると考えられている。 本年度に行ったのは、PoxDおよびPoxKを用いた反応構築である。前者はシトクロームP450に分類される、1回膜貫通型の酵素である。PoxDを組み換えタンパク質として獲得するために大腸菌を用い、界面活性剤を含む抽出バッファーを用いて処理し、目的タンパク質を膜部分から可溶化することで、精製タンパク質を獲得した。本酵素を用いて実験を行い、デカリン二重結合の酸化反応の試験管内での構築に成功した。 一方PoxKにおいては、多量かつ純度の高いタンパク質が得られたため、結晶化を試みた。複数の結晶が得られ、それらをX線回折装置に供した。しかしこれまでに得られた回折像の分解能は4Åまでであり、詳細な反応機構を解析するには至っておらず、より高い分解能を示す結晶の作成を続けている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要で既述したように、デカリン環からインデン環への環縮小反応に関わるタンパク質の精製およびX線結晶構造解析による反応メカニズムの解明に取り組んだ。水酸化酵素であるPoxKに関しては、X線構造解析に供することのできるタンパク質結晶が得られた。現在までに得られている結晶の分解能は低いものの、今後結晶化条件を最適化することで高い分解能の回折像が得られると考えている。また膜タンパク質であるP450 (PoxD) の精製が成功したことで、in vitroでの詳細な反応解析が可能となった。シトクロームP450のパートナータンパク質であるNADPH還元酵素も膜貫通型のタンパク質であるが、PoxDと同様に精製法を確立することができた。微生物の二次代謝に関わるP450を含む膜タンパク質には興味深い反応を触媒するものが多いが、精製が壁となり分子レベルでの解析が困難であった。本研究で用いた精製法は今後の膜タンパク質の研究の強力なツールとなると言える。研究実施計画通りに、oxaleimideの生合成に関わる酵素の反応メカニズムに迫る結果が得られてきていることから、おおむね順調に研究は進捗していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
P450(PoxD)の酸化反応に続く、水酸化反応を触媒する酵素(PoxK)の反応機構を明らかにするために、タンパク質結晶化を引き続き進める。また、末端二重結合の形成反応に関わる酵素の同定およびその反応メカニズムの解明に関しても並行して行っていく。可能であれば、新しい研究プロジェクトとして、昨年度に確立した膜タンパク質の発現・精製法を、ほかの膜タンパク質に対しても普遍的に応用できるように発展させていきたい。
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