研究課題/領域番号 |
17H07004
|
研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
志津 怜太 静岡県立大学, 薬学部, 助教 (50803912)
|
研究期間 (年度) |
2017-08-25 – 2019-03-31
|
キーワード | 核内受容体 / 組換えタンパク質 / in vitro評価系 |
研究実績の概要 |
核内受容体CAR及びPXRは種々の化学物質により活性化され、しばしば化学物質の肝毒性や薬物間相互作用の原因となる。よって、その活性化を予測可能なインビトロ評価系が求められているが、不死化培養細胞を用いた実験系では活性化の評価が困難である。本研究では、組換えタンパク質を用いたインビトロ実験系により、CAR及びPXR の活性化機序の解明、ならびに活性化評価システムの確立を目的とする。 はじめにCAR、PXR及びRXRαの全長組換えタンパク質の調整を行なった。大腸菌からGSTタグ融合タンパク質として各受容体を精製したところ封入体を生じてしまったため、可溶性向上の目的で6xHis-SUMOタグ融合タンパク質に変更した。その結果、著しく可溶性が向上した。精製用バッファーについて、pH、塩濃度、グリセロールの添加、界面活性化剤や還元剤の種類、リガンドの種類や有無などの検討を行ない、収量が良好な条件を見出した。以上により、CAR、PXR及びRXRαの全長組換えタンパク質の精製法を確立したため、この方法を用いて大腸菌の大量培養と各組換えタンパク質の精製を行なった。5’末端に蛍光色素であるFITCを付与したCYP2B6プロモーター上のDNA結合配列(NR1)を用い、精製したCAR-RXRαヘテロ二量体のNR1への結合をゲルシフトアッセイおよび蛍光偏光を利用した相互作用解析手法であるfluorescence polarization (FP)アッセイにより調べた。その結果、CAR-RXRαヘテロ二量体がNR1へ特異的に結合する実験条件を確立できた。さらに、当初の研究実施計画にはなかったが、核内受容体と転写共役因子やリガンドとの相互作用の解析が必要と考えられたため、これらの実験手法を確立するための準備を進めている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実施計画通りにCAR、PXR及びRXRαの全ての系で組換えタンパク質の調製方法を検討し、収量が良好な調整法を確立した。精製した組換えタンパク質を用いてFPアッセイによるタンパク質複合体のDNA結合モチーフへの結合を解析可能な実験系を構築したが、当初初年度に終了予定であったCAR活性化評価系の構築が完了していない。これは、組換えタンパク質調製法の確立において想定以上に多くの時間を費やしたことが原因と考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
構築したFPアッセイを用い、組換えタンパク質にリガンドを前処置することで、核内受容体とDNAの結合へのリガンドの影響を明らかにする。またCARやPXRの結合が報告されている数種類のDNA結合モチーフを用いて、リガンドの種類により核内受容体のDNAへの結合選択性が異なるかを明らかにする。核内受容体へのリガンドの結合をハイスループットで解析可能な評価系構築のために、タンパク質のアンフォールディングを利用した相互作用の解析手法であるdifferential scanning fluorimetryを用いて、当研究室で所有している種々の化学物質の核内受容体への結合を調べ、培養細胞を用いた評価系における核内受容体の活性化プロファイルと比較する。以上により、CARおよびPXRのリガンド依存的な転写活性化を評価できるインビトロ評価系を確立するとともに、リガンドの種類により各標的遺伝子の転写選択性が異なる理由を解明する。 精製した組換えタンパク質とDNA結合モチーフのオリゴDNA、ならびにコアクチベーターの核内受容体結合モチーフLXXLLを含む10残基程度の合成ペプチドをCAR-RXRαと混合し、CAR/RXRα-DNA-SRC1複合体の結晶化を試みる。また、アゴニスト及びアンタゴニストのCAR転写活性化への影響の違いを構造学的な観点から解明するため、アゴニスト及びアンタゴニスト結合時のコアクチベーターとの結合に重要なAF2ドメインの構造変化や、DBD、LBD及びhinge領域の位置や分子内・分子間の相互作用部位を明らかとする。
|