【背景】光線力学療法(PDT)は低侵襲な癌治療法の一つで,これまで我々は癌細胞が糖を取り込む性質を利用した光感受性物質であるグルコース連結クロリンや水溶性へと克服したオリゴ糖連結クロリン(Oクロリン)を開発し,現行薬のタラポルフィンナトリウム(TS)より高い腫瘍選択性と抗腫瘍効果を報告してきた.膵癌治療の実臨床で遭遇することの多いGEM耐性となった腹膜播種を有する症例を想定し,Oクロリン-PDT効果についてGEM耐性膵癌細胞株やその膵癌腹膜播種マウスモデルを用いて基礎的な検討を行った. 【方法】1. ルシフェラーゼを発現させたヒト膵癌細胞株を用いてGEM耐性膵癌細胞株を樹立する.2. 樹立したGEM耐性株に対して,新規Oクロリン-PDTによる殺細胞効果についてin vitroで評価する. 3. マウス膵癌腹膜播種モデルを作成後,Oクロリン投与による癌組織および各臓器への集積性をスペクトロメーターで評価し,またPDTによる抗腫瘍効果をIn Vivo Imaging Systemにより経時的に定量測定して腫瘍縮小効果を検討する. 【結果】1. ルシフェラーゼ遺伝子導入後のAsPC1細胞を用いて,低濃度のGEMより暴露し徐々に濃度を上げていく方法で安定したGEM耐性膵癌細胞株を樹立した.またGEM耐性膵癌細胞株のGEMに対する50%細胞発育阻害濃度(IC50)を計測すると「計測不能」との結果であり,GEMに耐性を示すことを確認した.2. 元のAsPC1細胞株とGEM耐性膵癌細胞株に対するOクロリン-PDTの殺細胞効果はそれぞれTSに比べ11.3倍と16.4倍の効果が認められた. 【結論】In vitroにおいてGEM耐性膵癌に対するOクロリン-PDTの有効性が示された.今後In vivoでのOクロリン-PDTの有用性について検討する必要がある.
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