頭頸部癌をはじめ、様々な癌種で腫瘍組織内に存在する免疫細胞の組成や性質が、癌の進展や治療抵抗性と関わることが知られている。申請者はこれまでに、一枚のホルマリン固定パラフィン包埋切片から12種類のエピトープを免疫組織化学で解析できる多重免疫染色ならびにその画像定量化技術イメージサイトメトリーを開発し、3枚の切片から定量化可能な14種類の免疫細胞の組成や性質を統計解析することで、癌の亜分類や予後と相関する腫瘍の免疫的性質を報告してきた。本研究では、この多重免疫染色・イメージサイトメトリー法を用いて、HPV陽性ならびに陰性中咽頭扁平上皮癌検体を解析し、癌組織中のCD8陽性T細胞、ヘルパーT細胞、制御性T細胞、B細胞、NK細胞、マクロファージ、樹状細胞、顆粒球などの免疫細胞の細胞頻度・位置情報に基づく予後相関解析を進めた。当初の計画通り、腫瘍巣内と腫瘍周囲組織の差異、癌細胞と14種類の免疫細胞の位置関係、分布様式を調べ、予後との相関を解析した。COX比例ハザードモデルを用い、年齢、性別、HPV statusで調整した結果、腫瘍組織内のTH2リンパ球やCD66b陽性顆粒球と予後の相関が示された。また、免疫細胞の位置情報を解析するデジタル画像解析手法を最適化し、PD1陽性ヘルパーT細胞の癌組織内分布が予後不良となることを示した。本手法を応用し、Oregon Health & Science Universityと共同研究にて甲状腺乳頭癌の組織免疫特性の解析や、悪性黒色腫における腸内微生物特性と腫瘍内免疫細胞の相関の解析などを進め、成果を報告した。
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