研究課題
多くの高齢者が罹患している歯周病は、歯槽骨欠損、歯牙の喪失へと進展することで、QOLの低下のみならず感染症、摂食障害、栄養不良、認知症等を生じさせる。また、多数の高齢女性が罹患する骨粗鬆症では、脊椎圧迫骨折や大腿骨頚部骨折の治癒が遷延し、廃用性筋萎縮とも相まって長期臥床の経過をたどる例も多く、介護の必要性など社会的な負担も生じさせる。このように重要性の高い高齢者の骨疾患に対して、骨再生療法が奏功すると期待できる。我々は最近、高齢者からでも安全かつ低侵襲に採取できる細胞から、多数の高品質な骨芽細胞を誘導するダイレクト・リプログラミング技術を確立し、骨欠損の回復をなし得るだけの骨芽細胞の供給に目処がたった。また、京都大学・秋吉教授のグループと共同で、新しいスキャフォールドを開発した。これは天然多糖を主成分とし、自在な3D形状に成型することが可能な基質である。そこで本研究では、我々が開発した2つの技術、ダイレクト・リプログラミングによる骨芽細胞誘導技術と、新規スキャフォールドによる3D組織構築技術を融合し、新しい骨再生治療の基盤技術を確立するため研究を行った。その結果、架橋の条件によってさまざまな孔径と孔密度を有するスキャフォールドを作成できた。またこのスキャフォールドに接着蛋白をコーティングして、その中で骨芽細胞を培養すると、骨芽細胞が孔内部に進展接着して3次元的に増殖・配向することが、Actin-ヘキスト染色と共焦点顕微鏡観察によって確認された。また、Alizarin Red S染色により骨分化が誘導できることが示され、長期間経ると分解吸収されることが確認された。H30年度にさらなる検討を加えることにより、本研究は歯槽骨欠損に対するより安全で効果の高い移植材料を用いた新しい再生医療を確立できる可能性がある。
2: おおむね順調に進展している
新規スキャフォールドと骨芽細胞の接着を確認し、新規スキャフォールド上での増殖、骨分化誘導が確認できたため。
今後の研究方針としては、ダイレクト・リプログラミング技術により得られた細胞と新規スキャフォールドを合わせた移植材料のさらなる改良をすすめ、動物実験で骨欠損への移植手術で骨再生を評価し、歯槽骨再生医療への応用の可能性を検証する。
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