研究課題
本研究の目的は,「心臓浮腫の多角的病態解析および浮腫のvisualizationを利用した重症度の評価」を行うことにある.浮腫の初期変化や遷延的変化を肉眼病理学的所見のみから,その重症度を評価することは困難である.そこで,浮腫の重症度判定のために,生化学的・分子生物学的,さらには画像解析学的評価法について検討した.浮腫の形成機序に関与すると考えられる炎症,血管透過性亢進,酸化,細胞血管傷害,蛋白変性などの中から,炎症性サイトカインであるインターロイキン6(IL-6),中枢神経系の髄鞘を構成する主要タンパクであるミエリン塩基性タンパク(MBP)および神経細胞由来の解糖系酵素である神経特異エノラーゼ(NSE)に注目し,生化学的および免疫組織科学的観点から,心臓浮腫の発生機序について解析を行った.生化学的検査の結果,IL-6は,頭部外傷において,脳脊髄液中の濃度が高値を示し,右心血中では,やや高値を示すものの,非頭部外傷や窒息などにおいても高値を示しており,有意な差は認められなかった.NSEは,頭部外傷に伴う脳浮腫が認められる症例および中毒症例において,脳脊髄液中の濃度が高値を示した.一方,右心血中では,有意な差は認められなかった.MBPは,中毒症例において,脳脊髄液中の濃度が高値を示し,右心血中では有意な差は認められなかった.心臓における各種マーカを用いた免疫染色の統計学的解析は終了していないものの,中毒死例において全般に染色性が濃く認められた.本結果は,中毒死の際に生じる浮腫の原因としては,循環障害や炎症によるものよりも,神経障害が主体の病態である可能性が示唆された.また,CTによる下肢の画像解析によって,CT値分析による浮腫の客観的評価を行い,剖検時の指圧による主観的評価と同様の評価が可能である事を明らかにし現在報告を予定している.
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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