研究実績の概要 |
本研究では,在宅生活中および入院/入所中の認知症者におけるADL障害に関連する要因を重症度別に明らかにすることを目的としていた。H30年度は, 各評価指標とADLとの関連性を重症度別に多数例を集めて調査した。これまで集まった対象者の合計としては, 軽度認知症7名, 中等度認知症31名, 重度認知症93名であった。ADL; Phsical Self Maintenance Scale(PSMS) を被説明変数として, その他の臨床変数である, 年齢, 性別, 認知機能, 行動心理症状, 栄養状態, 並存疾患の個数とその重症度, 抑うつ, 痛みを説明変数として重回帰分析を実施したところ, 認知機能, 並存疾患の重症度, 栄養状態, agitationが有意に関連していることが明らかになった。 本研究によって, 入院する認知症患者に対して効果的な日常生活リハビリテーションを行うには、その背景障害とそれらの影響の程度の検討することが重要であった。結果として、認知機能障害、並存疾患、栄養状態、焦燥感が日常生活障害の原因としてあげられた。これは、従来行動心理症状ばかりに囚われていた認知症リハビリテーションの方法を日常生活障害に焦点を当てた場合、リハビリテーションの方法を変更する必要性があることが示唆された。今後は、日常生活能力を改善するためには重度にいたってさえもこれらの要因にアプローチする必要がある。これは従来の重症度を包括してなされていた認知訓練や運動療法など画一したリハビリテーション方法を変える必要があるかもしれないことを示唆するという点で重要な結果である。
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