研究実績の概要 |
酸化された低比重リポ蛋白(oxLDL)が動脈壁に蓄積し、炎症を引き起こすことにより粥状動脈硬化を惹起することが知ら れている。その過程で生じる脂質過酸化がマロンジアルデヒド(MDA)などのアルデヒドを産生する。これまでの研究から、MDAとその分解物のアセトアルデヒド(AA)がリジンと反応して 生じる1,4-dihydropyridine型の付加体(M2AA)が動脈硬化の慢性炎症に重要な影響を及ぼしていることが提唱されている。われわれは、M2AAを含むMDAのリジン付加体に注目した。MDAの中央の炭素がアルデヒドと反応することでM2AA以外にも多種多様なMDAのリジン付加体が産生されることが考えられた。そこで、MDA、AAとリジンアナログであるアミノカプロン酸(6ACA)を反応させ、HPLCを用いその反応物の解析を行った。その結果、M2AA以外のピークが確認され、それぞれのピークから主たる物質を精製あるいは部分精製することに成功した。ApoE欠損マウス(動脈硬化感受性マウス)の血液中にM2AAに対する抗体が動脈硬化発症初期から上昇することが明らかになっている。そこで、ApoE欠損マウスで、M2AA以外のMDAに起因する付加体に対する抗体価が上昇しているか否かを検討した。まず、HPLCでMDA、AAと6ACA反応物を9分画(分画/分)に分離し、キャリア蛋白に結合させ、それぞれの分画に対するApoE欠損マウスの血清中の抗体価を測定した。その結果、M2AAを含む分画以外の分画についてもApoE欠損マウスの血清中の抗体価の上昇が認められた。これらの結果より、ApoE欠損マウスでは、MDAに起因した様々なリジン付加体が抗原となり免疫機構を活性化しているが明らかになり、炎症性を惹起しうる付加体もこれまでに考えられていた以上に多種多様である可能性が考えられた。
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