LC(low complexity)ドメインが実はタンパク質の機能において、構造を持つ領域と同じくらい重要な機能を有していることが少しずつ明らかになり、近年注目を集めている。またLCドメインが、液-液相分離において重要な役割を果たしていることも認識されつつある。細胞骨格を構成するタンパク質は、3種類(アクチン、チュブリン、中間径フィラメント)に大別される。研究代表者は、LCドメインを有する中間径フィラメン トに着目した。中間径フィラメントは、3つのドメイン(Head、Rod、Tail)に分類される。中央に位置するRodドメインは、αヘリックス構造を有する。一方、 HeadドメインとTailドメインは、LCドメインである。これまでに、 DesminのHeadドメインに変異導入を行うことで、cross-βポリマーの形成能に影響を与える知見を得てきた。事実、ミオパチーや心筋症を生じさせるDesminの変異を導入すると、Thioflavin-Tによるcross-betaポリマーの形成が促進され、逆にF/Yなどのアミノ酸に変異を導入すると、形成過程が抑制されることが秋からになった。また、2018年度は、固体NMR法を用いることによって、ポリマーの核となる構造をシグナルとして同定することを目指した。米国・NIHのRobert Tyckoと米国・テキサス大学のSteve McKnight・加藤昌人らの協力を得て、中間径フィラメントのHeadドメインによって形成されるcross-betaポリマーのNMRシグナルを検出することに成功した。さらに、Intein技術を用いることで全長タンパク質における部分標識の実現を進めている。これまでに、Intein反応の効率化を行い、収率の上昇を実現した。現在、NMRシグナルの検出と解析を進めている。
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