研究実績の概要 |
食道扁平上皮がん症例におけるctDNAの遺伝子変異解析を行うにあたり, 人を対象とする医学系研究, 「食道癌手術症例に対する循環腫瘍DNA測定に関する前向き試験」として, 和歌山県立医科大学倫理審査委員会へ研究計画書を提出し, 同委員会において, 平成29年9月5日に許可されました(受付番号 2095). その後, 和歌山県立医科大学附属病院にて術前化学療法後に手術予定の進行食道癌症例の登録を行い, 術前化学療法開始前, 化学療法1コース後, 化学療法2コース終了後, 手術直前, 術後7日目に血漿を採取しdroplet digital PCR装置を用いて, PIK3CA(E542K, E545K, H1047R), BRAF(V600E), KRAS(G12D, G12V, G13D, G12A, G12C, G12R, G12S)をターゲットとしたctDNAにおいて, 遺伝子変異を検討しました. 8症例40検体に関して検討を行い, 結果は進行食道がんの1例で, 化学療法開始前にはPIK3CA E545Kの有意な変異遺伝子を検出しました. この症例の臨床経過をみますと, 化学療法1コース後にはctDNAにおけるPIK3CA 545Kの変異率の減少が確認され, 化学療法を2コース施行後には, 同変異遺伝子は消失しました. 本症例は, 臨床上も化学療法が著効し, PRの症例でした. 進行食道がん症例においてctDNA中の遺伝子変異率は化学療法の効果を反映する可能性が示唆されました. 今回の検討にて遺伝子変異が検出できた症例は1例であり, 今後症例数を増やし検討する必要があると考えられます. また, 今後も引き続き, 遺伝子変異を認めた症例の長期予後を観察します.
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