研究実績の概要 |
PD-1 (programmed cell death-1)阻害薬を中心とした免疫チェックポイント阻害治療は、悪性黒色腫、腎癌、肺癌さらには頭頸部癌で臨床使用され、これまで予後不良であったこれらの悪性腫瘍の長期予後の改善が期待されている。一方、これまでに甲状腺癌に対して免疫チェックポイント阻害治療の有用性を評価した報告はない。我々は、MYC蛋白が甲状腺未分化癌の患者において亢進していることを見出しており、MYCの翻訳ターゲットの一つであるPD-L1(programed cell death-ligand 1)も過剰発現していることが予想される。そのため、甲状腺癌においてもPD-L1の過剰発現により腫瘍細胞が抗腫瘍免疫応答から逃れ、免疫チェックポイント阻害により抗腫瘍免疫応答を介した治療が奏功すると考えられている。 まず、細胞株を用いた実験を進めるため、ウェスタンブロット法による定量にて甲状腺正常細胞株(Nthy-ori3-1)と甲状腺未分化癌(8305C, 8505C, ASH3, OCUT2, OCUT4)においてPD-L1の発現量を比較した。これら甲状腺未分化細胞では、正常細胞株と比較して、明らかなPD-L1の発現亢進を認めた。一方、TTF-1, TPO, TSH-Rなどの甲状腺分化マーカーは未分化癌セルラインにて発現が低下していることを証明した。 加えて、ヒト臨床検体において甲状腺未分化癌とコントロール甲状腺組織(過形成)の免疫染色法によるPD-L1発現解析を行うため、条件設定等の予備実験を行なった。
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