研究課題/領域番号 |
17H07044
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研究機関 | 福岡県立大学 |
研究代表者 |
阪井 裕一郎 福岡県立大学, 人間社会学部, 講師 (50805059)
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研究期間 (年度) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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キーワード | ホーム / 家族 / 共同生活 |
研究実績の概要 |
今年度は、研究の目的を達成するために、1)文献研究、2)国内とスペインでフィールド調査を実施した。 1)については、海外文献を中心に、「ホーム」や「家族」といった概念の理論的再検討を中心に分析をおこなった。これまで家族社会学やジェンダー研究では「ホーム」や「家族」は抑圧的・不平等な場として批判対象とされてきた。しかし、欧米を中心に「ホーム」という概念を見直そうという研究動向がある。安心で安全な居場所としての「ホーム」を住宅や家族関係、ジェンダー規範から切り離して、その文化的意義を再考しようという視点であり、そのうえで、多様な「ホームレスネス」という事態を問題化し、多元的な「アットホーム」のあり方を探求しようという試みがある。「ホーム」という概念の多元性を認識したうえで、従来の枠組みを超えて再構築していくことが求められており、本研究では、こうした理論的枠組みの再構築作業をおこなった(成果の一部分ではあるが、『入門家族社会学』に寄稿した「多様化するパートナー関係と共同生活」、『三田社会学』に寄稿した「マイホーム主義を問いなおす:ホームと連帯の再構築へ」にて公表している)。 2)については、国内でシングルマザーのシェア居住やセクシュアル・マイノリティの生活実態についての調査を開始し、新たな共同生活の実践やその課題についてデータを得ることができた。また、2018年2月にスペイン・バルセロナにてホームシェアとLGBTの共同生活についての聞き取り調査・資料取集を実施した。ホームシェア発祥の地であるスペインの調査からは、ホームシェアの歴史や現状、課題、新たな取り組みの可能性について多くの知見を得ることができた。調査をもとに、日本のシェア居住や新たなホーム・共同生活のあり方について国際比較の視点を取り込んで分析を進めているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1年目は、これまでおこなってきた歴史研究や事実婚の調査に関する執筆作業に時間がとられることが多く、十分に調査・研究を進められたとは言い難い。とはいえ、文献研究や資料収集を大いに進展させられたこと、また、スペインや国内での調査が実施できたことは大きな収穫であった。
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今後の研究の推進方策 |
2年目は、前年度の調査をもとに学会報告・論文執筆をおこなう。同時に、主に以下二つの調査を進めていく予定である。第一に、シングルペアレントと単身高齢者によるシェア居住の調査である。欧州ではすでにこうした事業は数多く存在しており、近年日本でもいくつかの事業が始まっている。孤独や生活不安を感じている独居高齢者、あるいは、人の役に立つことをしたいと考えている高齢者と、子育てと仕事を両立しながら手助けを必要とするシングルマザーの双方のニーズを満たすための仕組みである世代間交流型のシェアハウスについて、事業を担う団体にアクセスし、事業者と実際に生活している当事者の双方へインタビュー調査を実施していく。第二に、世界で最初に同性婚を法制化するなど多様なパートナーシップ制度や共同生活の構築に先駆的に取り組んできたオランダにおいて、新たな共同生活の実践について調査を行う予定である。
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