研究課題/領域番号 |
17H07047
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研究機関 | 北海道医療大学 |
研究代表者 |
鈴木 伸弥 北海道医療大学, リハビリテーション科学部, 助教 (20803654)
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研究期間 (年度) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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キーワード | リハビリテーション / 転倒予防 / 可塑的変化 / 姿勢制御 / 予測的姿勢調節 / 前庭刺激 / 経頭蓋的磁気刺激 |
研究実績の概要 |
本研究では、姿勢反応にかかわる神経経路の興奮性を促進する方法の確立を目指すことが目標であった。そのために、平成29年度における研究では、前庭刺激が、上肢筋群における間接的皮質脊髄路を介した効果にどのように影響するのかについて検討した。 若年健常被験者8名を対象とした。間接的皮質脊髄路の効果を評価するために、空間的促通法を用いた。具体的には、右の上肢筋群(上腕二頭筋、上腕三頭筋、橈側手根屈筋、橈側手根伸筋)の表面筋電図を記録しておき、対側の一次運動野(上肢領域)への経頭蓋的磁気刺激ならびに同側の尺骨神経への電気刺激を組み合わせたコンバインド刺激を行った。空間的促通効果の判定には、単独刺激による筋電図反応の代数和に対するコンバインド刺激よる筋電図反応の大きさを指標にした。上記の刺激に組み合わせ、左右の乳様突起部へのガルバニック前庭刺激(GVS)を行った(持続時間1秒、知覚閾値の2倍)。なお、GVSの電極配置により、陽極刺激(筋電図記録側が陽極)と陰極刺激(筋電図記録側が陰極)をそれぞれ行った。 その結果、我々の先行研究で報告されている結果と同様に、コントロール(GVSなし)と比較して、GVSを行った場合、コンバインド刺激による上腕二頭筋筋電図の空間的促通量は増大した。なお、陽極刺激と陰極刺激で、その増大量に有意な差は見られなかった。一方、上腕二頭筋と拮抗関係にある上腕三頭筋においても、刺激極性にかかわらず、GVSによって空間的促通量が増大した。さらに、前腕筋群においても同様の変化が見られた。 平成29年度の研究成果から、ヒト上肢筋運動ニューロン群を支配する間接的皮質脊髄路に対して、GVSは、その極性や標的筋の作用にかかわらず、類似した興奮性効果をもたらすことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度における研究の目標は、姿勢反応にかかわる神経経路を活性化する方法を明らかにすることであった。その結果、上肢筋群において、前庭刺激により間接的皮質脊髄路が活性化されることを示唆する知見が得られた。従って、当初の目標をおおむね達成することができたと判断し、「おおむね順調に進展している」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度の研究の目標は、姿勢反応にかかわる神経経路に可塑的変化を誘導する介入方法を明らかにすることである。この目標を達成するために、若年健常被験者を対象に、当該経路の活性化を目的とする介入の前後で、姿勢反応ならびに誘発筋電図を計測する。介入効果が弱い場合には、介入中の運動課題の併用や刺激変数(強度、タイミング等)の検討も行う予定である。
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