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2017 年度 実績報告書

バイオアクティブガラスを用いた 矯正用ステンレススチール表面の改質

研究課題

研究課題/領域番号 17H07048
研究機関北海道医療大学

研究代表者

河口 馨太朗  北海道医療大学, 歯学部, 助教 (70803641)

研究期間 (年度) 2017-08-25 – 2019-03-31
キーワード生体活性ガラス / EPD法 / 歯科矯正用材料 / 表面改質 / BAG
研究実績の概要

溶融法を用いて作製したBAG粉末を蒸留水中に懸濁し,ステンレススチール(SS)電極に10~15 Vの直流電圧あるいは1kHzの正弦波交流電圧を10分間付与することによって,アノード電極として用いたSS表面に緊密なBAG層が形成されることが明らかとなった.そして,組成分析及び結晶構造の分析の結果,BAG層は粉末状態の時と同様にアモルファス構造を有していることが分かった。BAGは,その結晶性が高くなると生体活性が低下するという報告がある.よって,アモルファス構造を有していることは,溶液中で溶解しやすい性質を有していることを示しており,BAGのもつ生体活性が維持されていることが期待できる.また,BAG層は乳白色を呈しており,色調測定の結果,5 V,10 Vの電圧下で行った表面改質処理よりも,15 Vでの電圧下で行った表面改質処理のほうが、SSがより天然歯に近い色調となることが分かった.さらに,酸緩衝能試験において試料群と共に浸漬した酢酸溶液のpHが上昇したことから,BAGによる表面改質を行った試料は酸性溶液を中和する作用があることが分かった.続いて,エナメル質包埋試料に脱灰操作を行い,各円板状試料と共に人工唾液に全浸漬し,浸漬前後のエナメル質に対して超微小硬度計(ENT-1100a,エリオニクス)を用いてナノインデンテーション試験を行った.その結果,脱灰操作によりすべてのエナメル質包埋試料群の機械的特性が一様に低下し,その後人工唾液への浸漬に伴い回復傾向を示した.このとき,表見改質処理を行った試料と共に浸漬したエナメル質包埋試料群の機械的特性が,コントロール群と比較して強い上昇傾向を示した.以上により,BAG改質層から溶出するイオンは矯正治療中のブラケット周囲のエナメル質の脱灰を抑制するとともに,再石灰化を促進する作用を有することが明らかとなった.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

円板試料作製の手法は既に概ね確立され,各条件で形成されたBAG層の組成,結晶構造,審美性,機械的性質などがある程度明らかになった.一方,ワイヤー試料の表面処理の手法には当初の想定より改善の余地が多く,その確立に時間を必要とした.そのため,ワイヤー試料の特性を明らかにするための実験の進捗がやや遅れている.また,EPD法を行う際に懸濁液中に分散しているBAG粒子の荷電状態を明らかにするため,電位差滴定法を行ったが,この手法は,難溶性物質以外では正確な電荷量を求めることが困難であるという欠点がある.BAGは溶液中で溶解性を示し,リン酸イオンやケイ酸イオンによる高い酸緩衝能を持つ.したがって,電位差滴定法によってBAG粉末の等電点を求めることはできず,現在代替的な手法を模索中である.現在,表面改質処理を行ったSSワイヤーの機械的性質や耐食性を評価するための研究を進行中である.

今後の研究の推進方策

ワイヤー試料の機械的特性を評価する.まず,小型万能試験機(EZ Test,島津製作所)を用いてワイヤー試料の三点曲げ試験を行い,弾性係数を測定する.また,試験後の試料の表面性状および断面性状を走査電子顕微鏡(JSM-6610LA)で観察し,改質層のSS表面からの剥離状態の有無を調べるとともに,形成されたBAG層の厚さとワイヤー断面積の変化量を測定する.さらに,摩擦係数測定装置を小型万能試験機(EZ Test,島津製作所)に取り付け,各ワイヤー試料とブラケット(Mini Uni-twin Brackets,3M Unitek)間に発生する静的摩擦係数を測定する.乾燥状態(無潤滑状態),室温25℃の状況下で,ワイヤー試料とブラケットスロットとの角度を0°または10°の2条件に設定し,引き抜き試験を行う.ワイヤー試料表面の改質層の機械的特性(硬さ,弾性係数)を計測するため,超微小硬度計(ENT-1100a, エリオニクス)を用い,各ワイヤー試料の表面に対し,ナノインデンテーション試験を行う.
次に,表面改質を行ったワイヤー試料の電気化学測定を行い,耐食性を評価する.もしも表面改質による耐食性の向上が見られなかった場合はその原因を考察し,より緻密で厚みのあるBAG層の形成方法を模索する.そして,BAGに銀をはじめとした金属ナノ粒子や,キトサンナノ粒子を添加した粉末を用いたSSの表面処理方法について検討し,BAG改質層への抗菌性の付与を試みる.

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2017

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] Electrophoretic Deposition as a New Bioactive Glass Coating Process for Orthodontic Stainless Steel2017

    • 著者名/発表者名
      Kawaguchi Kyotaro、Iijima Masahiro、Endo Kazuhiko、Mizoguchi Itaru
    • 雑誌名

      Coatings

      巻: 7 ページ: 199~199

    • DOI

      10.3390/coatings7110199

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] バイオアクティブガラスとEPD法を用いた矯正用ワイヤーの審美性表面改質2017

    • 著者名/発表者名
      河口馨太朗,飯嶋雅弘,遠藤一彦,六車武史,川村尚彦,石川里奈,溝口 到.
    • 学会等名
      第76回日本矯正歯科学会学術大会

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公開日: 2018-12-17  

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