インフラマソームは強力な炎症性サイトカインIL-1β産生を制御する自然炎症経路の一つであり、心血管病の病態に共通する無菌性炎症の惹起に寄与する細胞内の分子複合体である。これまで、インフラマソーム複合体に含まれる分子として、E3ユビキチンリガーゼARIH2を同定した。詳細な解析を行うため、ARIH2を欠損・過剰発現したヒトマクロファージTHP-1細胞(レンチウイルスベクターとCRISPR/Cas9システムにより作製)を用いて、ARIH2はインフラマソームの構成分子であるNLRP3へのK48およびK63ユビキチン化修飾によりインフラマソーム活性を負に制御していることを見出している。 本研究では、ARIH2のNLRP3インフラマソーム活性化制御機序を解明するとともに、遺伝子改変マウスの作製を行い、ARIH2の病態における役割を検証する。今年度の研究では、ARIH2によるNLRP3の発現制御について、ARIH2欠損ヒトマクロファージTHP-1細胞を用いて、NLRP3発現量の変化をタンパク合成阻害剤であるシクロヘキシミド(CHX)添加によって解析した結果、ARIH2欠損THP-1細胞において、NLRP3のタンパク発現量に有意な変化はなかった。さらに、ドキシサイクリン添加によるARIH2の発現誘導を可能にしたTHP-1細胞(Tet-Onシステムにより作製)を用いた解析により、ARIH2の上昇に伴い、NLRP3の発現が低下することが明らかとなった。これらの結果からARIH2がNLRP3の発現を制御していることを示唆できた。ARIH2の役割をさらに検証するため、Cre-loxPシステムを利用したARIH2-floxマウスとCre-LyzMおよびR26CreERマウスとの交配により、マクロファージ特異的ARIH2欠損およびタモキシフェン誘導性全身ARIH2欠損(時期特異的)マウスを作製した。
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