研究課題/領域番号 |
17H07057
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
中村 幸恵 自治医科大学, 医学部, 助教 (20382955)
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研究期間 (年度) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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キーワード | 遺伝子治療 / グルコーストランスポーター1欠損症 / AAV / GLUT1 / SLC2A1 |
研究実績の概要 |
【背景】グルコーストランスポーター1欠損症 (GLUT1DS) は、脳組織への糖輸送障害が原因で乳児期早期から難治性痙攣、知的障害、小脳失調等をきたす疾患であり、SLC2A1遺伝子のハプロ不全による発症形式をとる。GLUT1DSに対する治療としてエネルギー代替療法であるケトン食療法があるが、根本治療を目指し、アデノ随伴ウィルス (adeno-associated virus; AAV) ベクターを用いて、GLUT1DSモデルマウス (GLUT1+/-マウス) に対する遺伝子治療開発を試みた。【方法】ヒト内在性GLUT1 promoter領域が同定されていなかったため、すでに同定されているラットGlut1 promoter配列と相同性の高いヒト塩基配列を、myc-DDKタグ付SLC2A1遺伝子発現ベクターに組み込み、培養細胞に遺伝子導入し蛋白発現評価を行った。同定したヒト内在性GLUT1 promoterを用いたSLC2A1 cDNA組込AAVベクター (AAV-GLUT1) を作成し、6週齢GLUT1+/-マウスに脳室内投与した。投与後、脳組織におけるGLUT1 mRNAおよび蛋白発現、運動機能評価 (rota-rod test)、髄液糖測定を行った。【結果】ヒト内在性GLUT1 promoter領域(305塩基対)について、遺伝子導入後の細胞免疫染色およびmRNA定量で外因性GLUT1(GLUT1-myc)発現を確認したため、同配列を治療用ベクター(AAV-GLUT1)に組込み、GLUT1DSモデルマウスに脳室内投与を行った。脳室内投与8週後、外因性GLUT1蛋白は、大脳皮質、海馬、視床において、主として血管内皮細胞に発現し、神経細胞や一部のオリゴデンドロサイトにも発現を確認した。更に、治療後は有意な運動機能改善および髄液糖上昇を認めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
GLUT1欠損症に対する遺伝子治療法開発の前段階として、より生理的なGLUT1発現に近づけるためのヒト内在性GLUT1 promoter領域の同定が確認出来た。更に、今回同定したpromoter領域を組み込んだ治療用AAVベクター(AAV-GLUT1)について、研究に必要十分な量を作成し、モデルマウスに対する遺伝子治療を開始することが出来た。しかしながら、モデルマウスの繁殖が想定より悪く、予定より少ない数での評価となったため、次年度マウス繁殖強化し、予定数の実験を遂行する。
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今後の研究の推進方策 |
ヒト内在性GLUT1 promoter領域 (305塩基対) を用いた、SLC2A1 cDNA組込AAVベクター (AAV-GLUT1) を用いた遺伝子治療について、脳室内投与群については、長期(治療半年、1年、2年後)における外因性GLUT1発現維持を確認する。また、投与周辺の脳組織における血管新生についてもlectin染色を用いて評価する。同時に、6週齢マウスにAAV-GLUT1を心腔内投与し、局所投与としての脳室内投与および全身投与としての心腔内投与における主要臓器分布の評価(off-target effect)として、投与後、心・肝・腎・筋組織における外因性GLUT1発現を比較する。
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