研究課題
【背景】グルコーストランスポーター1欠損症 (GLUT1DS) は、脳組織への糖輸送障害が原因の疾患であり、SLC2A1遺伝子のハプロ不全による発症形式をとる。GLUT1DSに対する治療としてケトン食療法があるが、根本治療を目指し、アデノ随伴ウィルス (adeno-associated virus; AAV) ベクターを用いて、GLUT1DSモデルマウス (GLUT1+/-マウス) に対する遺伝子治療開発を試みた。【方法】ヒトGLUT1 promoter領域 (305塩基対) を用いた、SLC2A1 cDNA組込AAVベクター (AAV-GLUT1) を作成し、6週齢GLUT1+/-マウスに脳室内投与した。投与後、脳組織におけるGLUT1 mRNAおよび蛋白発現、運動機能評価 (rota-rod test)、髄液糖測定を行った。同時に、6週齢マウスにAAV-GLUT1を心腔内投与し、局所投与(脳室内投与)および全身投与(心腔内投与)における主要臓器分布を確認した。【結果】AAV-GLUT1脳室内投与後、外因性GLUT1蛋白は、大脳皮質、海馬、視床に発現した。治療8週後では外因性GLUT1は主として血管内皮細胞に発現し、次いで神経細胞やオリゴデンドロサイトにも発現していた。更に投与周辺の脳組織における血管新生の改善が見られた。治療2年後においても血管内皮細胞や神経細胞における外因性GLUT1発現は維持されていた。脳室内投与群は、脳以外の主要臓器における外因性GLUT1発現を認めなかったが、心腔内投与群では肝および筋組織に外因性GLUT1発現を認めた。【結論】AAVベクターを用いた遺伝子治療は、GLUT1DSにおける新規治療として有望と考えた。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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The Journal of Gene Medicine
巻: 20 ページ: e3013
10.1002/jgm.3013.