研究実績の概要 |
骨髄異形成症候群(Myeloid Dysplastic Syndrome, 以下MDS)は様々な染色体異常,遺伝子発現異常を含む難治性造血器疾患である。我が国では近年増加しつつあり,年間5,000例以上が発症し,その多くは60歳以上の高齢者である。急性白血病への移行後に診断されるケースも少なくなく,高齢化が進行している中で本疾患の詳細な病態解明および早期診断や効果的な薬物療法の開発が急務である。 MDSでは5-Azacitidineが著効することもありエピジェネティクス研究やスプライシング異常の研究が中心であるが,体内では腫瘍細胞も正常細胞と同様に他の細胞と複雑なネットワークを形成しており,病態形成メカニズムの1つとして解明していく必要がある。本研究では,エクソソームと呼ばれる細胞が放出する小胞および内包されているRNAに着目し,細胞間相互作用の解析を中心とした骨髄異形成症候群の病態解明を行うことを目的とする。まずMDS由来の細胞株を含む複数の細胞株および血管内皮細胞,線維芽細胞等を入手し維持できる環境を整えた。さらにMDS由来の細胞株が放出したエクソソームを超遠心法およびExosome Precipitation Solutionを使用して回収した。網羅的解析により細胞内およびエクソソーム内のmiRNA解析を行ったところ,十数種類のmiRNAが他のmiRNAに比べエクソソーム内に多く含まれていることを確認した。このmiRNAの中には腫瘍化や転移への関与が報告されているものが含まれており,MDS細胞だけでなく周囲の細胞へ影響を与えている可能性がある。現在mRNAについても同様の解析を進めている。
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