研究課題
骨髄異形成症候群(Myeloid Dysplastic Syndrome, 以下MDS)は様々な染色体異常,遺伝子発現異常を含む難治性造血器疾患である。前年度までの検討によりMDS由来の株化細胞が放出する微小小胞(Exosome)に十数種のmiRNAが多く含まれていることを確認した。今年度は上記のmiRNAがExosomeを介して他の細胞に伝播するかどうかの検討を行った。レシピエント細胞には制御性T細胞(Treg)を選択した。これはMDSの進行が比較的長期に渡り,免疫システムによる排除を逃れていると考えたためである。超遠心法で回収したMDS細胞由来のExosomeを蛍光標識し,セルソーターにより健常人ボランティア末梢血から分取したTreg細胞の培養液に添加した。24時間培養後にTreg細胞を回収し,蛍光顕微鏡下の観察でTreg細胞の細胞質内にExosomeが十分に取り込まれていることを確認した。これらのTreg細胞中のmiRNAを網羅的に解析したところ,上記の十数種のmiRNAのうち9種が高発現していた。これらのmiRNAにはIL-10あるいはTGF-βの発現抑制に関わるタンパクを抑制するものが複数含まれていた。そこでExosome添加後のTreg培養液上清中のIL-10タンパク量をELISA法で測定すると約1.3倍の増加が,またIL-10 mRNAの発現についてはqRT-PCR解析で約2.5倍の増加を示した。MDSでは腫瘍細胞が放出するExosomeを介して免疫システムを抑制し,腫瘍細胞の生存を高めている可能性が示唆された。MDS細胞由来Exosomeを標的とした診断法および治療の開発が期待される。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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MicroRNA
巻: 7(3) ページ: 195-203
10.2174/2211536607666180709143335