研究課題/領域番号 |
17H07063
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研究機関 | 文京学院大学 |
研究代表者 |
鈴木 紫 文京学院大学, 経営学部, 助教 (80775601)
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研究期間 (年度) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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キーワード | 転職 / 副業 / 労働市場 / パートタイム |
研究実績の概要 |
本研究は、労働者の転職前の職歴や職能が転職行動に与える影響について、多面的な考察を行うことを目的とする。特に、労働者の過去の副業経験やパートタイムでの職歴が転職行動に与える影響を、理論的・実証的に分析するものである。 平成29年度は、研究実施計画に基づき、労働者の転職行動に関する既存文献の整理、研究手法の構築、個票データの収集・整理を行った。既存文献の整理においては、日本と米国の労働市場に関する研究を中心に、転職行動に関する理論的研究、非正規雇用から正規雇用への転職行動に関する実証研究、産業間・職種間の労働力再配置に関する実証研究、複数職保持者に関する理論・実証研究など、広範囲のサーベイ研究を行った。研究手法の構築については、先行研究を基に、後述の2種類の個票データと関連付け、実証分析手法の構築・再考を行った。個票データの収集については、既に入手済みの新興国エストニアのEstonian Labor Force Surveyの個票データに加え、日本の労働市場について、4か年度の「就業構造基本調査」の個票データを申請取得した。個票データの整理については、平成29年度に、エストニアの労働市場に関する基礎統計分析において、副業の有無が転職行動に影響を与えるという結果を得ることが出来た。既にその結果を踏まえた実証分析に移行しており、平成30年度早期の研究成果発表につなげるものとする。さらに日本の労働市場に関しては、取得した個票データを用いて、転職者に関する基礎統計分析をすすめている最中である。この基礎統計分析を早期に完結させ、エストニアの労働市場に関する実証分析手法に倣い、日本の労働市場におけるパートタイムの経験を持つ労働者の転職行動に関する実証分析に移行し、今年度中の研究成果につなげるものとする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上記研究実績の通り、昨年度は、既存文献の整理、研究手法の構築、個票データの収集・整理を実施したが、実証分析への移行という点において、日本の労働市場に関する研究に遅れが生じている。遅れの要因としては、平成29年度のスタート支援交付内定後に、「就業構造基本調査」の個票データを申請取得(平成29年12月末)したことから、基礎統計分析の開始に遅れが生じたことが挙げられる。しかしながら、先行しているエストニアの労働市場に関する実証分析に倣い、日本の労働市場に関しての研究も遂行可能であるという点で、その遅れを取り戻すことが出来ると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究においては、平成29年度に取り組んだ既存文献の整理、研究手法の構築、個票データの収集・整理を基に、エストニアと日本の労働市場に関する個票データを用いた実証研究に取り組み、研究成果をまとめるものとする。 まず、エストニアの労働市場においては、平成29年度に実施した基礎統計分析を基に、個票データを活用して副業が転職行動に与える影響についての実証分析をすすめ、その結果を考察し、論文執筆を完結させる。さらに、論文投稿、学会発表にもつなげるものとする。 次に、日本の労働市場については、4か年の「就業構造基本調査」の個票データを用いた実証的分析を行う。平成29年度より実施してきた基礎統計分析の結果を早期にまとめ、パートタイムの経験を持つ労働者の転職行動についての実証分析を行うものとする。日本の労働市場における転職行動、特に非正規雇用から正規雇用への転換(転職)については、近年先行研究が増えており、当初予定していた研究計画に新たな視点からの分析や考察を導入する必要性が生じている。この研究方法上の課題については、先行しているエストニアの労働市場についての実証分析に倣う形をとりながら解決することとする。日本の労働市場に関する実証分析も早期に完結させ、論文執筆、論文投稿、学会発表につなげるものとする。
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