本研究における、過去の副業経験の職業移動(転職)への影響の分析は、未だ先行研究が薄い。労働市場における需要と供給のミスマッチの解消に対して、副業の経験や職能が職業移動を通して果たす役割を、エストニア、日本という特性が異なる労働市場に対して示唆することは、学術的・政策的意義がある。近年の日本では、働き方改革とあわせて、副業・兼業の普及促進が図られ、副業従事率の上昇、副業保有動機や副業が果たす役割の変化が期待される。このような中、日本の副業保有の特性を明らかにし、副業保有が職業移動において果たしうる機能を考察することは、副業増加が労働市場にもたらす変化の予測にもつながり、社会的貢献があるといえる。
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