平成30年度の計画は、主に参与観察の本調査と得られた知見に基づく考察の記述・説明であった。 学校現場での参与観察(本調査)では、関東圏および関西圏の小中学校を訪問し、教師のふるまいを観察しつつその意図を教師本人に確認した。協力者である小中学校等の教師らは、それぞれが自らの教育実践の反省と研究のために、教育実践記録を綴り、またその実践報告の場をもっている。そうした教師らの授業を観察し教師と子どもや子どもと子どもとのやりとりを分析し、考察した。 上記の本調査と並行して、教師の教育実践記録の精読・分析も試みた。教育実践記録の分析は、教師が自らの教育実践を振り返る一助となるだけでなく、他の教師や発達援助職に携わる者の多面的・多角的な視座から検討されることによって、執筆者たる教師個人や検討会参加者の力量形成にも寄与し、より広くより深く教育関係をみることにつながると確信した。 これまでの文献レビューおよび本調査、教育実践記録の精読等から得られた知見をもとに、教師の子ども理解と子どもからの教師への信頼との関連を理論的に明らかにし、子どもと教師の関係性を組み替える可能性についての考察を、本研究の成果として発信した。具体的には、日本教育学会第77回大会における自由研究発表(2018年9月1日)や、藤田昌士・奥平康照監修『道徳教育の批判と創造』(エイデル研究所、2019年4月25日刊行)への寄稿論文が挙げられる。 なお、協力者である教師らは、本研究の終了予定時期(2019年3月)を経て翌年度の担任が「持ち上がり」学年であるケースが少なくないという。よって、本研究活動で得られた知見をより仔細に分析していくために、今後も引き続き参与観察やインタビューを行う。同時に、協力者たる教師が子どもからの信頼を獲得する様子や教師が子ども理解を深める様子を中心に分析し、その理論を説明する論文の執筆に取り組む。
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