本研究は、教育関係において最も重要な概念の一つである「信頼」について考察したものである。とりわけ学校教育では、行政機関を含む多くの当事者が「信頼される教師」の必要性を謳っているが、実際のところ信頼はそれほど万能ではない。小中学校の教師の協力を得て、学校のなかで教師と子どもとのやりとりを観察したり、教師らによる教育実践記録を読み解いたりすることで、教師への信頼にはむしろ「不信」が含まれていることが立証された。 ここで得られた知見をもとに、教師の子ども理解と子どもからの教師への信頼との関連をみることで、子どもと教師の垂直的な関係性を組み替えていく可能性があることを、まずは道徳教育の文脈で示した。
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