本研究の目的は3つ設定した。1つ目は横断的研究にて施設入所している要介護高齢者の低栄養サルコペニアの割合を明らかにすることである。2つ目は横断的研究にて低栄養サルコペニア群,サルコペニア群,低栄養群,健常群での身体機能,認知機能,ADL能力の違いを明らかにすることである。3つ目は前向きコホート研究にて,低栄養サルコペニアの転倒,ADL低下の有無,死亡の有無を評価し,有害事象のリスク因子を明らかにすることである。対象は施設入所している要介護高齢者255名とした。測定項目は、基礎情報(年齢、性別、要介護度、身長、体重、BMI、既往歴、服薬数)、サルコペニアの有無、栄養状態(MNA-SF)、ADL(BI)、身体機能(SPPB)、認知機能(MMSE)、筋力(握力)とした。サルコペニアはAWGSの基準に従って判定した。低栄養の判定にはMNA-SFを使用し、7点以下を低栄養とした。サルコペニアと低栄養を合併している対象者を低栄養サルコペニア群、サルコペニアのみをサルコペニア群、低栄養のみを低栄養群、両方とも該当しない対象者を健常群と定義した。低栄養サルコペニアは255名中87名(34.1%)であった。サルコペニアのみは105名(41.2%)に認められ、低栄養のみは25名(9.8%)に認められた。健常群は38名(14.9%)であった。低栄養サルコペニア群とサルコペニア群を比較した結果、ADL能力、認知機能、身体機能が有意に低い結果であった。また、サルコペニア群と健常群は測定項目において有意な差が認められなかった。12か月間のフォローアップで30名が死亡した。カプランマイヤー検定の結果、低栄養サルコペニア群はサルコペニア群、健常群より有意に死亡率が高い結果となった。本研究の結果より低栄養サルコペニアは死亡リスクがサルコペニア単独と比べて高いことが明らかとなった。
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