研究実績の概要 |
本研究の最終目的は、報告者が開発した「急性期病院における腰痛対策看護管理実践モデル」の普及と定着により、急性期病院に勤務する看護職の職業性腰痛予防と腰痛発症に伴う不利益の軽減を実現することである。 日本において加速する少子高齢化に伴い、医療・看護需要の急増が避けられない状況となっている現在、その看護需要に応えるためには、看護職がキャリア後期まで心身ともに健康な状態で就業を継続することが求められる。看護職の長期就労の阻害因子の一つである、業務関連疾病、特に今後その深刻さが増すと考えられる、腰痛への組織的な対策が急務である。報告者は、これまで明らかにされていなかった、看護職の腰痛発症の背景に潜む人的資源および職場環境上の問題を明らかにし、それらを基にした腰痛対策看護管理実践モデルを開発した。今後このモデルを現場の看護管理実践で普及・定着させるためには、モデルの洗練化、有効性の検証、実践適用のための支援ツールの開発と、段階的な検証が必要である。そこで本研究期間においては、モデルの精錬に向けて、看護職の腰痛に関連する体験の実態を明らかにし、モデルの構築を行った。 報告者が先行研究において抽出した、「看護職の腰痛に関連する体験」として「腰痛誘発行動に至った理由」26項目、「腰痛に伴う不利益」19項目について、全国の急性期病院500施設に勤務する看護師6,055名を対象とした自記式質問紙調査を行った(回収率42.5%、有効回答率は92.2%)。探索的因子分析の結果、腰痛誘発行動に至った理由4因子、腰痛に伴う不利益3因子が抽出された。これらの因子の相互関係について仮設モデルを設定し、このモデルに基づいて「急性期病院の看護職の腰痛に関連する体験モデル」を作成した結果、比較的高い適合度が示された。
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