研究課題/領域番号 |
17H07073
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研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
森本 崇志 青山学院大学, 理工学部, 助手 (30803259)
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研究期間 (年度) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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キーワード | 固液相変化 / 過冷却 / 核生成 / 潜熱蓄熱 / 相変化物質 / エマルション / 界面活性剤 |
研究実績の概要 |
本年度は,汎用性のある蓄熱熱輸送媒体としての利用が期待できる相変化エマルションを対象とし,主に静置条件下におけるエマルション中の相変化物質の過冷却特性を明らかにするとともに,相変化物質の過冷却抑制手法について検討を行った. 研究成果として,エマルション中の相変化物質粒子の核生成は,各粒子で独立して生じていることが確認され,核生成のしやすさは乳化に使用する界面活性剤の種類に応じて異なる,ということが明らかとなった.特に,界面活性剤の親油基の構造が核生成に大きな影響を及ぼしており,分散させる相変化物質と似た構造の親油基を持つ界面活性剤が,相変化物質の核生成に有効であるということがわかった.相変化物質と構造の異なる親油基を持つ界面活性剤(Tween 80)を用いて相変化エマルションを生成した場合,最大で約15.5 °Cの過冷度を伴ったが,分散相である相変化物質と構造の似た,直鎖状の親油基を持つ界面活性剤(Tween 60)を用いた場合,過冷度を約4 °Cまで抑えることができた.これは,詳細に現象をとらえられていないものの,界面活性剤の親油基が相変化物質の構造と似ているために,テンプレートのような役割を果たし,界面活性剤分子と,相変化物質との間で核生成を生じたためだと考えられる.今後は,実際の熱交換を想定し,流動条件下での過冷却特性の調査,並びに核生成を促す界面活性剤添加の有無が熱交換性能に及ぼす影響を調査していく予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究予定では,平成29年度で,相変化エマルション中の相変化物質の過冷却抑制に有効な手段を提案し,来年度に使用する,二重管型熱交換器の製作に取り組むまでを目標としていた.そして,概ね予定どおり,過冷却の抑制手法を提案することができ,実験装置の製作に取り組むことができている.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方法としては,新たに製作する二重管型熱交換器を用い,実際に相変化エマルションを冷却しながら流動させることで,実機での使用を想定したデータの取得を目指す.そして,エマルションに過冷却抑制手法を施さない場合と施した場合での熱交換性能についても比較検討を行う予定である.熱交換性能を評価するために,主に計測する項目としては,相変化エマルションの熱伝達係数,交換熱量,流動時における相変化物質の凝固開始温度である.熱交換性能の評価を行うと共に,流動条件下における,相変化物質粒子の過冷却特性の解明および相変化物質の凝固を伴った複雑な熱伝達メカニズムの解明を目指す.
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