研究課題/領域番号 |
17H07075
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
安川 智子 北里大学, 一般教育部, 講師 (70535517)
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研究期間 (年度) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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キーワード | ヴァンサン・ダンディ / 古楽復興 / ドビュッシー / 和声 / ラモー / 19世紀フランス / 20世紀フランス |
研究実績の概要 |
2017年度は研究基盤となる資料整理を行いつつ、2018年3月に論文1本(「古楽を聴く耳の形成―ドビュッシーの時代に聴かれたラモーの音楽」『北里大学一般教育紀要』)を刊行し、また同じく3月に美学会東部会例会において研究発表「フランス的和声誕生の一断面――『メルキュール・ミュジカル』1905年創刊号を読み解く」を行った。また関連した論考を、現在編集中の書籍『ハーモニー探求の歴史』に寄稿しており(共編著)、2018年秋に刊行予定である。 これらの成果の意義は、19世紀フランスにおける「古楽復興」の動きを整理するとともに、それらとドビュッシーに代表される20世紀初頭フランスの「新しい和声」との関連を具体的に跡付けたことにある。19世紀は単に過去の音楽を演奏として復興するだけでなく、それをいかに聴くか、という20世紀以降のピリオド楽器運動につながる動きが生まれている。ドビュッシーはその同時代に身を置き、古楽の「聴き方」を養いつつ、それを自身の音楽に反映させていたことが分かった。一方で、フランス的な和声の特徴とされていた「旋法的和声」は、そのフランス性を音楽的に証明できるわけではなく、言説的に形作られたものであることが確認できた。いずれにしてもこうした一連の動きが、ドビュッシーを代表とする「近代フランス」の黄金期を歴史的に形成したことは事実であり、歴史の表には出てこないものの、資料をたどると、当時のこうしたムーヴメントを生み出した各場面で、ヴァンサン・ダンディが重要な役割を負っていることが確認できた。 これらの成果をひとつにまとめて国際的に発表するべく、2018年9月にバーミンガムで行われるカンファレンス「Editing, Perfoming and Re-Composing the Musical Past」に応募したところ採択された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一貫した研究目的の下で、論文発表、学会での口頭発表、共著書の準備と国際学会申し込み(発表決定)をバランスよく行うことができた。
アウトプットに比べて、収集した資料の整理と読み込みの時間が少々足りないと感じる。次年度はそうした活動にもさらに時間を割り当て、より緻密な研究を心がけたい。
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今後の研究の推進方策 |
ヴァンサン・ダンディの現在における国際的な研究状況の整理と、そこに加えるべき新しい知見がなんであるかの見極めを第1の目的として、引き続きダンディ周辺の資料を読み込んでいきたい。研究の国際的な成果発表と情報交換が急務であるため、9月まではバーミンガムにおけるカンファレンスの準備に注力する。 一方で古楽復興運動そのものにかんする研究は、各方面で進んでおり、現在の最新の研究状況を把握することが必要である。そのうえで、古楽復興と20世紀フランスの新しい音楽との関係は、現在のところほとんど追及されていないため、ドビュッシー、ダンディの音楽活動を多角的に検証しながら、この視点での研究を進めていきたい。
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