研究実績の概要 |
本研究の目的は,想起における判断基準のシフトであるリベレーション効果について,その個人差に着目して現象を検討することである。 平成29年度は,リベレーション効果が同じ個人に繰り返し生起するのかを検討するため,一般成人を対象とした実験を行った。48名 (20代~50代の男女24名ずつ) の一般成人の実験参加者は,学習フェイズで単語を記銘し,テストフェイズで再認判断を行った。その際半数の試行では再認の直前に計算問題が挿入された (計算あり条件) が,もう半数では挿入されなかった (計算なし条件)。計算あり条件のold 判断率がなし条件のそれより高ければ,判断基準の緩い方向へのシフト,つまりリベレーション効果が生起したといえる。本研究では,上述の課題を同一の実験参加者に対して期間をおいて3回行い (1,2回目は同日,3回目は2回目の約3ヶ月後),リベレーション効果の大きさについて1,2,3回目の関連を検討することで,本効果に個人差が存在するのか,および個人差は個人内で安定して生起するのかを検証した。現在3回目の実験を終え,データ分析を遂行中である。 また,第29回日本発達心理学会において,リベレーション効果の生起因として考えられているメタ認知に関連する自主企画シンポジウムに指定討論者として参加した。メタ認知・注意・実行機能に関する専門家の示唆を得て,研究の基盤を構築した。さらに,リベレーション効果と個人特性に着目した研究成果をまとめ,第一著者として国際ジャーナルであるPsychologyに投稿し,採択された。
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