申請課題では,超音波帯の音響放射圧に着目し,従来の培養方法とは全く異なるスクリーニング方法を実現した.具体的には,未分化の細胞を除去する方法として,振動子を用いて超音波を培養ディッシュの裏側に照射し,生じる音響放射圧により培養ディッシュの底面に接着した任意の細胞を非接触で局所的に除去するスクリーニングシステムを具現化した. 細胞に照射する振動子として,ランジュバン型振動子の先端にホーンを接続した超音波ホーンと中心に収束するようにIDT串歯電極を設置したFocusSAWデバイスを準備した. 超音波ホーンを使用した際には,除去範囲が直径200 umほどの大きさとなったが,一方で除去できずに残存する細胞などその挙動が不安定な場合もあった.これは,超音波ホーン全体が溶液に浸漬されているため,超音波の照射が上部だけでなく周囲に対しても発生し,音場が不安定なためであると考えられた.また,FocusSAWデバイスを用いた際には,除去範囲が直径100 umほどの大きさまで縮小することができた.さらに,PBSに浸漬する時間を増加することで,安定して細胞を剥離することができた. 本システムは,試薬を投与する必要なく, 多様な細胞種に対応できることから,再生医療の臨床化のためのiPS細胞の大量培養システムの発展・普及に寄与することが期待できる.今後は,FocusSAWデバイスと培養ディッシュとの距離の取り方の精度を向上させていくことで,より微小な範囲の細胞を剥離する.
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