宋版『論衡』によってエキ斎が校注した、あるいはその校注を転写したと見られる諸本を調査した結果、エキ斎の自筆校本は静嘉堂文庫蔵和刻本と慶應義塾蔵広漢魏叢書本の二本であり、そのうち和刻本は、エキ斎が校注を書き入れた後に、宋版論衡の旧蔵者である山梨稲川の親族に渡っている。一方、広漢魏叢書本の校注は、京都大学蔵久保謙手校本や東北大学狩野文庫藏広漢魏叢書本に転写されている。両系統とも、エキ斎と近い関係にあった人物によるものである。調査した諸本のうち、静嘉堂文庫蔵小島抱沖手校本は、エキ斎校注の転写ではなく宋版の原本に拠って校合を行ったと考えられ、エキ斎以降の宋版伝来の一端が知られた。
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