研究課題
海馬では、記憶形成時に活動した細胞がsharp waves/ripples(SW-R)とよばれる特徴的な脳波を伴い自発的に活動することが知られている。この時、特定の細胞が順番に活動するシークエンス発火(記憶再生)が記憶の固定に重要な役割を果たすと考えられているが、下流の細胞においてシークエンス発火がどのように受容されているかは明らかになっていなかった。本研究では海馬CA1野の錐体細胞に入るシナプス入力の時空間パターンを大規模かつ高速に可視化し、シナプス入力にもシークエンス構造が存在することを発見した。このシークエンス入力はSW-R発生時に、SW-Rに参加しやすい細胞で多く観察され、樹状突起上の近接したスパインに収束していることを見出した。シークエンス入力は樹状突起上に一様に生じるわけではなく、特定の突起上で高頻度に生じることから、樹状突起の各分枝がそれぞれ独立のコンパートメントとして働く可能性がある。また、シークエンス入力は逆向きに生じることもあり、細胞の発火シークエンスと同様の特性を持つことも明らかにした。空間的な近接性やシークエンス入力の樹状突起上での方向性など、シナプス入力の時空間パターンは、細胞体の活動性を大きく変動させることが知られている。SW-Rに参加しやすい細胞が空間的に近接したシークエンス入力を高頻度に受け取る、という本研究の結果は、特定の細胞がSW-R時に活動する記憶再生のメカニズムの一端を担う可能性がある。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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Biological Psychiatry
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10.1016/j.biopsych.2018.11.009
Neuroscience Research
10.1016/j.neures.2018.09.014