研究実績の概要 |
平成29年度は、肝細胞癌の免疫微小環境を構成する免疫細胞の種類と組み合わせに関して、多重免疫染色、遺伝子発現解析ならびに多変量解析を行い検討した。肝細胞癌158例において検討した結果、肝細胞癌の免疫微小環境は浸潤する免疫細胞の組み合わせと多寡により、Immune-high, Immune-mid, Immune-lowの3群(Immunosubtype)に分けられることがわかった。 このうちImmune-high subtypeは、T細胞浸潤に加えて濾胞外B細胞ならびに形質細胞浸潤に特徴づけられる群であり、RT-PCRで検討すると、IfngやCxcl9/10をはじめとするTh1/CTL関連遺伝子の強い発現が認められた。また、Immune-high subtypeは独立した予後良好因子であることが判明した。さらに重要なことに、Immune-high subtypeは一般に予後不良と言われる低分化型肝細胞癌に有意に多く認められ、Immune-high subtypeに属する低分化型肝細胞癌やCK19陽性高悪性度肝細胞癌は予後が良いことが判明した。従って、肝細胞癌において、組織型や分子生物学的分類に加えて免疫微小環境を検討する意義を示すことができた。 また、肝細胞癌は多段階発癌の良いモデルであり、癌の進展に伴い免疫微小環境がどのように変化するか検討した。その結果、免疫微小環境が多段階発癌の過程にあわせて段階的に変化することが明らかになった。高分化型肝細胞癌から中分化型肝細胞癌に進展する場合と、中分化型肝細胞癌から低分化型肝細胞癌に進展する場合とでは浸潤数の変化する免疫細胞の種類が異なり、それぞれの過程で生じる腫瘍側の分子生物学的な変化が腫瘍内における免疫微小環境の形成に強く影響していると推察された。
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