本研究課題は明治期のプロテスタント教会における代表的キリスト者が抱いていた神道観の特質とその背景を解明し、近代日本キリスト教史と神道史の架橋を目指すものである。研究実施計画にしたがって研究を行った結果、平成30年度は以下のような成果があった。 本年度は前年度の資料調査の成果をふまえ、植村正久と海老名弾正を中心的な対象として、明治期キリスト者の神道観にまつわる言説の分析を行った。その結果、近代的宗教概念と宗教進化論を前提として、信教の自由や社会秩序の強化といった文脈から日本の「伝統」としての神道をとらえるという共通した枠組みが明らかになっていった。そこから植村と海老名の神道観の差異の要因も考察することが可能となった。以上の成果はキリスト教史学会の大会や神道宗教学会の例会にて発表し、またそれに基づき論文も執筆した。 本年度は研究計画の実施状況に鑑みて出張調査は行わなかったが、都内の図書館に所蔵されている植村、海老名らの神道観に関わる一次資料の調査・収集を行った。 また前年度に引き続き研究協力者を1名任用し、その協力を得て資料の調査・整理や目録作成の作業を実施した。本年度は同志社大学人文科学研究所監修『近代日本キリスト教新聞記事総覧』(日本図書センター)に基づき、『基督教世界』、『福音新報』、『日本基督教新報』、『護教』、『教界時報』といったキリスト教系新聞の神道に関する記事の目録を作成した。また雑誌『新人』と『六合雑誌』の調査を行い、同様に神道に関する記事の目録を作成した。さらに神道とキリスト教の関係についての研究文献の目録を作成した。これらのリストはウェブサイトにて公開し、また『福音新報』に関するリストを『國學院大學研究開発推進機構日本文化所年報』第11号に掲載した。
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