老化および精神神経疾患において脳内ネットワークの巧緻性破綻が注目され、オリゴデンドロサイトによる“髄鞘のチューニング”が重要であることがわかって きた。しかし、その脳微細構造変化の評価は従来のMRI では3次元構造の観察が難しく、“髄鞘のチューニング”の解析には限界があった。申請者は、微細構造変 化を超高解像度・3次元画像で観察することを近年に可能とした「脳透明化技 術」と「拡散MRI」で突破口を開きつつある。本研究の目的は透明脳化技術及び拡散 MRIを並行して用い、灰白質 と白質の髄鞘形成と神経細胞間連携を正常、加齢、疾患モデルマウスで解析するための評価方法を確立することである。脱髄・再髄鞘化モデルマウスの作成と解析プロトコールを確立し、脳地図をもとに定位的に脳梁近傍の脳皮質に LPCを注入し脱髄巣を作成することに成功した。脱髄巣における白質及び灰白質の評価のため、冠状断切片を作成しCUBIC法を用いて透明化することに 成功した。脳梁及び脳皮質における脱髄の確認のための免疫染色の条件検討を行ったFluoroMyelin Red を用いた染色にて、脳梁における脱髄巣は明確に同定できたが、皮質においては髄鞘が少なく、脱髄巣と正常領域の境界が明確にできなかった。一方放射線学的検討として、「ヒトMRIデータ評価のための解析手法整備が進められた。脳容積・灰白質容積を評価する従来手法であるVoxel based morphometryの解析パイプライン整備に加え、拡散テンソル解析、拡散尖度解析、 NODDI解析、MR G-ratio 、ミエリンイメージング(T1/T2)による脳内微細構造の定量化を行う解析環境の整備を行った。さらにこれらの最先端MRI定量値による精度良い灰白質評価を行うため、種々の定量値の灰白質マッピングを可能とする最先端のHuman connectome projectパイプラインを導入した.
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