研究課題/領域番号 |
17H07103
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
金久保 有輝 上智大学, 理工学部, 研究員 (70802487)
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研究期間 (年度) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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キーワード | クラスター代数 / 結晶基底 / 幾何結晶 / q-指標 |
研究実績の概要 |
平成29年度は、「ダブルBruhatセル上のクラスター変数の表現論的意味づけ」及び「幾何結晶の作用と、座標環のクラスター代数構造の関係」について研究を行った。
「ダブルBruhatセル上のクラスター変数の表現論的意味づけ」については、以下のような結果を得た。パリ・ディドロ大学の大矢浩徳氏、上智大学の中島俊樹氏と議論をしたところ、GがA,D,E型の単純代数群である場合、アファイン量子群の表現の(truncated)q-指標を、ダブルBruhatセルG(u,e)上の適当なクラスター変数を座標変換したものの式で書き表せるということが明らかになった。このことから、クラスター変数を座標変換したものの明示公式に、アファイン量子群の表現論的な意味づけがなされたことになる。G(u,e)上のクラスター変数には幾何結晶の作用を施すことができるため、今回の結果から、q-指標と幾何結晶の作用の関係を調べるという新たな研究課題が生まれた。また、GがG2型の場合、セルG(e,c^2) (c はあるコクセター元)上のクラスター変数を、結晶基底の単項式表示の言葉で表せることがわかった。
「幾何結晶の作用と、座標環のクラスター代数構造の関係」については、中島俊樹氏との共同研究により、以下のような結果を得た。単純代数群のダブルBruhatセルG(u,e)上の座標環と、幾何結晶の作用の関係を調べた。その結果、幾何結晶の作用が、セル上の座標環から他のセル上の座標環の適切な局所化への埋め込みを導くことがわかった。この埋め込みは、元のセル上の初期クラスター変数を、他のセル上の初期クラスター変数に対応させるものである。この埋め込みと、座標環上の mutation とのcompatibility が成り立つこともわかった。これにより、幾何結晶作用とクラスター代数理論の一つの関係性が明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では、ダブルBruhatセル上のクラスター変数と、結晶基底理論、アファイン量子群の表現論との関係を明らかにしようとしているが、29年度の研究で、単純代数群のダブルBruhatセルG(u,e)上のクラスター変数と幾何結晶作用の関係を明らかにすることができ、またGがA,D,E型の場合、クラスター変数とアファイン量子群の表現のq-指標との関連も明らかにすることができた。セルG(u,e)上のクラスター変数とq-指標の関連については、30年度に研究をする予定のものであったが、29年度中に明らかにすることができた。これにより、q-指標と幾何結晶の作用の関係を明らかにするという新たな研究テーマを見つけることができた。基本表現や、A型のKR加群のq-指標は、適切な結晶基底の単項式表示の和で表されることがわかっているため、A,D,E型の単純代数群のセル上のクラスター変数が結晶基底の単項式表示で表される場合とそうでない場合の違いを表現論的に理解することができた。ただし、他の型の場合は、まだ明らかにできていない部分がある。以上のことを踏まえ、「おおむね順調に進展している」という評価になった。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、単純代数群のダブルBruhatセルG(u,e)上のクラスター理論と結晶基底理論の関係を研究した。平成30年度は、「クラスター理論と幾何結晶理論のより普遍的な関係」、及び「セル上のクラスター変数、アファイン量子群の表現論と幾何結晶の関係」を研究する。
「クラスター理論と幾何結晶理論のより普遍的な関係」については、以下のように研究を進める。一般のKac-Moody群のダブルBruhatセルG(u,e)上のクラスター変数、または古典群の一般のダブルBruhatセルG(u,v)上のクラスター変数に幾何結晶の作用を施すことを考え、クラスター代数構造とのcompatibilityを明らかにする。一般のダブルBruhatセルG(u,v)への幾何結晶の作用を考える際は、セルG(u,e)における幾何結晶の作用の'積'を考えることになる。この'積'にはいくつか種類があるため、具体的な計算例を見ながら、クラスター代数の理論と最も合致するものを採用し、集中的に調べる。
「セル上のクラスター変数、アファイン量子群の表現論と幾何結晶の関係」については、以下のように研究を進める。【研究実績の概要】でも述べたように、考える群GがA,D,E型の場合、アファイン量子群の表現の q-指標を、セルG(u,e)上のクラスター変数で表せるということが、29年度の研究で明らかになった。このことを利用し、30年度は「幾何結晶のクラスター変数への作用が、対応するアファイン量子群の表現の言葉でどのように解釈されるか」を研究する。具体例を多数計算してみたところ、この幾何結晶の作用を次々と施していく操作が、q-指標を計算する「FMアルゴリズム」の過程と酷似していることがわかってきた。幾何結晶の作用と「FMアルゴリズム」等との関連を予想し、証明することを目標とする。
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