乳歯が萌出する前から口腔内に定着するミティスレンサ球菌は、生体にとって有害な活性酸素種の一つである過酸化水素を産生する。過酸化水素は細胞壁を自由に通過できることから細菌自身にも毒性が強いが、これらの役割は未だに解明されていない。 申請者らはミティスレンサ球菌の産生する過酸化水素が自然免疫細胞であるマクロファージの働きを抑制することを報告しており、これらが口腔細菌叢の形成に何らかの影響を与えているのではないかとの仮説を立てている。 本研究では、健常な乳幼児を対象に乳歯萌出前、乳前歯萌出期、乳歯列完成期、永久歯萌出開始期に分けて唾液を採取し、過酸化水素産生性細菌であるミティスレンサ球菌に焦点を当てた研究を行っている。 H30年度では、タックマンプローブ法を用いてリアルタイムPCR法を行い、過酸化水素産生に関与する可能性のある4つの遺伝子pyruvate oxidase(SPX)、NADH oxidase(NOX-1)、lactate oxidase(LOX)、α-glycerophosphate oxidase(GLP)の検出を行った。 その結果、特にSPX遺伝子は、乳歯萌出前から乳前歯萌出期にかけて遺伝子の発現に差が認められ、これらの遺伝子は歯牙の萌出状態に関与することが示唆された。
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