昨年度の結果を踏まえ、本年度は111In標識2価MSHの作製と評価を行った。具体的には、グルタミン酸の2つのカルボン酸に直鎖MSHペプチドを導入した2価直鎖MSHを作製し、αアミノ基をDOTAのカルボキシル基と縮合することでDOTA結合2価直鎖MSHを作製した。111In標識を行い、MC1R陽性細胞であるB16F1への集積量を評価したところ、その集積量は0.3% injected dose (ID) 程度であり、2価直鎖MSHのMC1Rへの結合親和性がインビボイメージング薬剤として十分でない可能性が示された。そこで直鎖MSHに比べ、MC1Rへのより高い結合親和性を有することが知られている環状MSHを用いて、新たにDOTA結合2価薬剤を作製した。直鎖MSHの場合と同様に、グルタミン酸にスペーサを介して2分子の環状MSHを導入し、次いでDOTAを縮合した。111In標識反応を行い、B16F1への集積量を評価したところ、直鎖MSHの場合に比べ10倍以上高い集積が観察された。更に、その集積量は2つの環状MSH間をつなぐスペーサ構造の影響を大きく受け、(pro-Gly)2をスペーサとして持つ2価環状MSHは、(pro-Gly)12をスペーサとして持つ2価環状MSHに比べ、約2倍高い集積値を示した。両2価環状MSHのB16F1からの解離速度を比較した所、両者の間に大きな差は見られなかった。一方、その集積を膜画分と内在化画分に分けて評価した所、(pro-Gly)12をスペーサとして持つ2価環状MSHの方が速やかに細胞内へ内在化され、かつ結合全体に占める内在化の割合も高いことが明らかとなった。今後はスペーサ構造をより詳細に検討し、優れた集積性と滞留性を兼ね備えた候補化合物の探索を引き続き行う予定である。
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