研究実績の概要 |
近年、申請者らは、植物の神経伝達様システム(仮称)という新しい植物情報伝達システムを提唱し、その存在を証明することが本研究の目的である。動物の神経伝達システムは、アセチルコリン(ACh)、アセチルコリン受容体(AChR)およびACh分解酵素(アセチルコリンエステラーゼ, AChE)の3者からなり、動物の筋収縮に関わる生命維持に必須である。植物においては、AChとAChEの2者の存在が認められているが、植物AChRについては、未発見である。 本研究では、植物AChR遺伝子の発見を目指し、初めにムスカリン性およびニコチン性AChRリガンドに対して高い結合能を有する植物のスクリーニングを行った。ムスカリン性AChRリガンドとしてトリチウム標識のQNBを、ニコチン性AChRリガンドとしてヨウ素125 で標識されたα-ブンガロトキシンを使用した。また、植物試料についてはACh含有量が多い種を約30種選抜し、それらの粗膜画分を用いて本スクリーニングを行った。その結果、ハーブ類の粗膜画分において動物細胞と同程度のニコチン性AChRリガンドに対する結合能が認められた。次に同試料を用いて薬理試験を行った結果、動物のニコチン性AChRのブロッカーであるd-ツボクラリンに対する結合能を示した。これらのことから、植物においてもAChR様タンパク質の存在が推察され、本タンパク質は動物のニコチン性AChRの薬理特性と類似することが推測された。
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