研究課題/領域番号 |
17H07128
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研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
高橋 葉子 (遠藤葉子) 東京薬科大学, 薬学部, 助教 (30453806)
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研究期間 (年度) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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キーワード | リポソーム / ペプチド / 脳 |
研究実績の概要 |
本研究では、核酸を搭載させたペプチド修飾ナノバブルを調製し、超音波照射との併用による脳組織への効率的な核酸導入ツールの開発とその脳血管障害治療法への適用を目指している。これまでに、カチオン性脂質を利用したpDNA・siRNA・miRNA搭載ナノバブルの調製、および脳組織へ集積性を有するAngiopep-2ペプチド修飾ナノバブルの調製にそれぞれ成功している。本年度は、核酸搭載が可能なAngiopep-2ペプチド修飾ナノバブルの調製を試みた。しかしながら、pDNAを搭載し脳への集積性が確認できたナノバブルでは、miRNAは搭載し難いことが明らかとなった。これはpDNAとmiRNAの分子サイズ、有する電荷の違いによるものと考えられた。そこでナノバブルの調製溶媒をイオン強度の低いものへと変更し、脂質組成比、ペプチド修飾率、精製(遊離ペプチド除去)方法なども適宜変更し、異なる組成の安定なペプチド修飾リポソームを調製した。調製したペプチド修飾リポソームは、ペプチド未修飾、あるいはコントロールペプチド修飾リポソームと比較して、脳血管内皮細胞bEnd.3との相互作用が増強することが蛍光顕微鏡観察により確認された。本ペプチド修飾リポソームに超音波造影ガスを封入することでバブル化も可能であること、超音波造影能を有すること、さらに、課題であったmiRNAの搭載が可能であることが明らかとなった。そこで、in vivoにおけるmiRNAデリバリーツールとしての有用性を評価する前に、マウスへ静脈内投与した後の脳組織へのナノバブルの集積性をin vivoイメージング装置を用いて確認した。しかしながら、Angiopep-2ペプチド修飾に伴う脳組織への集積性の増強は認められなかった。現在、in vivoにおいても標的指向性を発揮し得るmiRNA搭載ナノバブルの更なる最適化を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
カチオン性脂質を含有するAngiopep-2修飾ナノバブルに対し、miRNAの搭載を試みたがその効果は認められなかった。脂質とmiRNAの反応性をあげるべく、調製溶媒、脂質組成、ペプチド修飾率等を変更したところ、miRNAの搭載が可能なAngiopep-2修飾ナノバブルの調製に繋げることができた。しかしながら本ナノバブルは、in vitroにおいては脳血管内皮細胞との特異的な相互作用が認められたものの、in vivoにおいては尾静脈投与後の脳組織への集積性が認められなかった。核酸を搭載させた状態でのナノバブルの安定性・標的指向性評価、その最適化について時間を要しており、in vivoにおける核酸導入の評価に至っていないことから、やや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
miRNAの搭載と脳組織への集積性の両者を可能とするペプチド修飾ナノバブルの調製・最適化を目指す。これまでに得られた知見により、カチオン性脂質含有ナノバブルは核酸と相互作用させるうえで利便性がよいものの、その組成によっては凝集しやすく、ガスの保持能が低下する懸念があることが明らかとなっている。核酸の搭載能と標的への集積性をいずれも高めるため、より安定なナノバブルとしてアニオン性脂質含有ナノバブルの利用を試みる。負電荷を有する核酸を表面に搭載させるために、正電荷を有するポリマーや糖などを更に用いる必要はあるものの、ナノバブルとして安定なため、組成比や修飾率などの調製条件に関し、これまで以上に幅広く変更が可能になると考えられる。核酸搭載能、血管内皮細胞との相互作用、およびin vivoにおける脳組織への集積性を指標に、本研究に最適なナノバブルの調製を目指す。また、マウスへの核酸導入効果の評価を進めるとともに、脳梗塞などのモデル動物を用いた検討に着手する予定である。
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