従来、広告に魅力的なモデルを用いることは、購買行動を間接的に促進する効果があるとして戦略的に行われてきた。先行研究から身体や顔の造形の魅力と消費者の広告の評価の関係については明らかとなっているが、魅力の評価に影響を及ぼす重要な要因である表情が広告の評価に与える影響は十分に検討されているとは言えない。そこで本研究課題は、魅力に大きく関わる表情に注目し、それが商品の評価や選択にいかなる役割を果たすかについて、特に国際比較という視点から実験心理学的に明らかにすることを目指すものである。本研究課題の目的を達成するために、刺激や手続きが厳密に統制された複数の心理学実験を設定した。平成30年度(最終年度)においては、前年度に引き続き、本研究課題のトピックである表情認知、マーケティング、消費者行動の心理に関する書籍および論文雑誌から情報を収集・整理した。また、前年度に実施した、広告の表情が商品の評価に与える影響について日本人を対象とした評価実験(具体的には、約60名の日本人女子大学生に対して、個別に衣服モデルの画像を1枚ずつ見せ、その衣服の好ましさについて1(まったく好きではない)から9(非常に好き)の9件法にて評定を求めた。画像は、インターネット通信販売に掲載されている画像を加工したもので、12名のモデル(男女同数)の無表情と喜び表情画像を用いた。分析では、無表情時の評定値をベースラインとして、喜び表情時の衣服に対する好ましさの印象が、モデルの性別でどのように変化するかについて検討した。)を2つの学会にて発表することで社会に発信し、議論を踏まえて第2実験の計画を修正した。その計画に基づき、モデル画像の収集・加工及び実験手続きについて準備を行った。
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