核酸医薬はRNA分解をはじめスプライシング制御およびタンパク質翻訳阻害などRNAに特異的に作用するため、新たな創薬シーズとして期待されている。筋ジストロフィーや脊髄性筋萎縮症などの遺伝性神経・筋疾患では勢力的に核酸医薬の開発が進んでいる一方、RNAを本体とするウイルスに対する治療学的効果は十分に検討されていない。 そこで本研究では、我が国をはじめアジア諸国で問題となっている致死的な日本脳炎ウイルス(JEV)をモデルとして、ゲノム自体がRNAであるプラス一本鎖RNAウイルスに治療効果を示すRNA分解型アンチセンス核酸の開発を目的とした。今年度は実験計画に従いウイルスRNAに効果的に結合し、分解作用を示すアンチセンス核酸の設計および核酸医薬の抗ウイルス作用を評価するためのin vitroスクリーニング系の確立を試みた。JEV標準株および野外株で保存性の高い機能的ドメインを含むゲノム領域およびRNA二次構造のホモロジー解析、RNA分解作用に重要な核酸の化学修飾部位/組成を解析することで、JEVゲノムRNAに特異的に結合することが予測されるアンチセンス核酸配列を複数決定した。設計されたアンチセンス核酸のウイルス増殖抑制効果は、標的RNA配列の分解効率および感染性ウイルス粒子の定量により現在解析中である。 本研究をさらに発展させた研究計画が2018年度の若手研究(課題番号18K14595)に採択されたため、今後はJEVゲノムRNA分解能が最も高いアンチセンス核酸配列をin vitroスクリーニングにより最適化し、RNA分解メカニズムと共にマウス生体を用いた感染実験によってその治療効果および薬理動態、安全性を調べる予定である。
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