研究課題/領域番号 |
17H07143
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
室伏 貴久 日本大学, 歯学部, 専修研究員 (60800787)
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研究期間 (年度) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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キーワード | 多形核白血球 / 短鎖脂肪酸 / 細胞死 / NETs |
研究実績の概要 |
歯周病原細菌の培養上清中の短鎖脂肪酸を測定したところ、mMオーダーの様々な短鎖脂肪酸が含まれることが分かった。歯肉上皮細胞株を用いた実験では、酪酸、プロピオン酸、イソ酪酸、イソ吉草酸単独の作用で細胞死が誘導され、他の短鎖脂肪酸である酢酸、ギ酸、乳酸、コハク酸では誘導されなかった。これらのことから、まず、酪酸、プロピオン酸、イソ酪酸、イソ吉草酸がヒト多形核白血球に及ぼす影響について調べることとした。当初は末梢血から分離した多形核白血球を用いて実験を行う予定であったが、多くの実験が必要であると考えられ、予定通りに検体を得ることが難しく思われたので、まずはヒト全骨髄性白血病細胞株であるHL-60細胞をdimethyl sulfoxide (DMSO)およびall-trans retinoic acid (ATRA)で刺激することにより得られる多形核白血球様細胞を用いて実験を行い、末梢血由来多形核白血球で確認することとした。そのため、前HL-60細胞に様々な濃度のDMSOおよびATRAを作用させ、経時的に細胞を回収してライセートを作成し、CD16bを指標に好中球様細胞への分化をウエスタンブロットにて調べた。DMSOを2%以上の濃度で作用させると、細胞は3日以内にほぼすべてが細胞死を起こした。この細胞死はDMSO濃度を少なくするとともに減少し、1.25%では細胞死はほぼ確認できなかったが、細胞の凝集が認められた。ATRAによる分化誘導を試みた実験では、0.25~4μMの間でATRA依存的な細胞の凝集の増加が確認された。このATRA刺激では細胞死はほとんど確認できなかった。これらの結果から、HL-60細胞のDMSOおよびATRAによる多形核白血球様細胞の誘導条件を決定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初は末梢血から分離した多形核白血球を用いて実験を行う予定であったが、多くの実験が必要であると考えられ、予定通りに検体を得ることが難しく思われたので、まずはヒト全骨髄性白血病細胞株であるHL-60細胞をDMSOおよびATRAで刺激することにより得られる多形核白血球様細胞を用いて実験を行い、末梢血由来多形核白血球で確認することとした。現在までに、培養細胞を用いた多形核白血球様細胞の誘導条件を決定するのに時間を要したので、当初の予定からはやや遅れているが、この間、歯肉上皮細胞を用いた研究で短鎖脂肪酸刺激は活性酸素の産生を誘導すること等、本研究に役立つ情報を得てきた。今後、上記培養細胞を用いた実験系で研究推進を行っていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
まず、誘導条件を決定したHL-60細胞株を用いた多形核白血球様細胞を用いて、以下の様に研究を進める。 1.短鎖脂肪酸が多形核白血球様細胞のNETosisを引き起こすかどうかを確認する。また、細胞死種や活性酸素およびオートファジーが起こっているかどうかを検討する。 2.NETosisに伴い培養上清中に放出される、炎症や自己免疫疾患関連因子の放出について調べる。 3.短鎖脂肪酸誘導NETosisコントロール法を検討する。 これらの結果が実際に末梢血由来の多形核白血球で起こっているかどうかを調べる。
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