哺乳類の生殖機能は加齢とともに低下するが、その詳細は不明である。雌の排卵は、脳のkisspeptinニューロンが卵巣からのエストロゲンを感受することによって、下垂体から黄体形成ホルモン(LH)のサージ状分泌が起こることで引き起こされる。また先行研究から、若齢時の卵巣除去は加齢に伴うLHサージ分泌の低下を防ぐことが可能であると報告されている。このことから申請者は、加齢に伴う生殖機能の低下の原因は、自身のエストロゲンに長期暴露され続けることでkisspeptinニューロンのエストロゲン感受性が低下し、LHサージが引き起こされない結果、排卵が障害されることにあるという仮説を立てた。この仮説を検証するために、生後5ヶ月で卵巣除去し長期エストロゲン暴露の影響をなくしたモデルを作製し実験を行った。動物は、生殖機能が低下する22ー24ヶ月齢になるのを待って実験に使用した。若齢時に卵巣除去をしていない動物ではLHサージの分泌は抑制されていたが、生後5ヶ月で卵巣除去した動物では、若齢と同様にLHサージの分泌がみられた。kisspeptinニューロンのエストロゲン感受性の低下はkisspeptinとエストロゲン受容体 αの遺伝子の二重蛍光in situ hybridization(ISH)によって明らかにするため、条件検討を行い最適条件を確立した。動物が実験に使用できるようになるまでに2年を要したため、kisspeptinとエストロゲン受容体α遺伝子の二重蛍光ISHはまだ完了していない。本実験から、長期卵巣除去は加齢に伴うLHサージ分泌低下をレスキューすることが確かめられ、先行研究の再現性が得られた。今後、この動物の kisspeptinニューロンにおけるエストロゲン受容体の発現を検証することで、これらの加齢に伴う生殖機能低下への関与を明らかにする。
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